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携帯電話所持禁止の舞妓 10円置いて料亭や置屋の電話借りる

 京都市東山区宮川町。絵に描いたような木造家屋のしっとりとした街並が美しいこの町は、「五花街」と呼ばれる京都の花街のひとつだ。

 舞妓見習いや舞妓が住む置屋には、15、16才から少女たちが「仕込み屋さん」という修行期間に入っている。そうした彼女たち、お仕込みさんの一日は長い。

 14才の榊彩音さん(妓名はふく音さん。以下、ふく音さん)が説明する。

「まず朝は8~9時の間に起きて、顔を洗ってから、お母さん(置き屋の女将)のお手伝いで洗濯機を回し、お姉さん(先輩舞妓)の分も全部洗濯します。その間に仏様におぶう(お湯)を出したり、お地蔵様にお花を出したりして、お洗濯物を干す。ひと通り仕事を終えてからお母さんと一緒にご飯を食べるので、朝ご飯とお昼ご飯はだいたいいつも兼用です」

 朝の仕事を終え、11時すぎに朝昼兼用の食事をとった後はすぐにお稽古に向かう。

「舞、鼓などの鳴り物が主なお稽古です。練習場は置屋の目の前で、そこでどちらも1時間半から2時間くらい。舞台などイベントの前や試験の前は毎日みっちりお稽古しますけど、普段は2日に1回ということが多いです。お稽古がない時は置屋にいて、お母さんの手伝いをしたり、お茶屋さんに届け物をしたりしています」(ふく音さん)

 取材をしたその日は、舞や鳴り物の稽古場から鋭い叱声が聞こえてきた。

「『足の運び方が違う!』『指先をピンと伸ばして!』『扇子の持ち方が間違ってる!』と細かく注意します。仕込みさんは舞を知らないのはもちろん、挨拶の仕方も知りません。そこから教えるんです。稽古の最初には『おたの申します、お師匠さん』と畳に膝をつけて深くお辞儀をするというようなことですね」(舞のお師匠さん)

 お稽古が終わり午後3時すぎに置屋に戻ると、夕方からお茶屋に向かうお姉さんたちの準備の手伝いが始まる。

「お座敷の準備をしたり、着付けの手伝いをするんです。お姉さんが出た後も届け物を頼まれてお茶屋に行ったり、夕食の準備や片づけなどお母さんの手伝いをしたり、雨が降ったらお姉さんが行ってるお茶屋にコートや傘を届けたりすることもあります。夜寝るのは遅うなります。お姉さんの門限が1時なので、帰りを待ってお姉さんがお風呂に入った後にお風呂です。そのあとお姉さんの着物をたたんで寝ます」(ふく音さん)

 休みは月に2日だけ。それも必ず休めるとは限らない。ふく音さんが住む置屋「河よ志」の女将・佐々木民子さんは言う。

「ごひいきのお茶屋さんから『この日来てほしいわ』と言われたら、休みますというわけにはいかないので。舞妓さんの休みはあってないもんや」(佐々木さん)

 お姉さんがお座敷に入れば、ふく音さんもそのお世話のため、休むことはできない。貴重な休日も舞妓修業の時間に費やす。バスを使って京都の町やお寺をめぐっているという。

「どこにこのお寺があるいうことがわかったら、お客さんがお聞きやした時に言えるさかいにって、バス券を渡して、バスの乗り方を教えて。いろんなとこに行って周囲を見てどこに何があるいうのも勉強え、ゆうて行かせてます」

 そう佐々木さんが言うと、ふく音さんが、「京都の町も少しずつわかってきた感じどす」とうなずいた。

 実はお仕込みさんと舞妓にはお給料がない。代わりに生活費やお稽古代などはすべて置屋持ち。ちょっと喫茶店にいく時や、バスに乗ってお寺を回る時には佐々木さんからその都度お小遣いをもらうのだ。舞妓になるとお座敷で客からお小遣いがもらえるようになるという。また、ふく音さんの年頃ならば興味があって当たり前の携帯電話を持つことも許されない。

「仕込みさんはもちろん、舞妓さんも携帯電話は持ったらあきまへん。置屋の電話を使うか、呼ばれた料亭などの電話を借りるだけです。お借りする時は必ず『おたの申します』と言うて、十円玉を置いてくるのが決まりどす」(佐々木さん)

 置屋によっては携帯電話を持つことが許されているが、その場合でも街中で歩きながらの通話などは厳しく禁じられている。

※女性セブン2014年11月13日号

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