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「眠った満足感がない」など睡眠学者が教える不眠度チェック

“春眠暁を覚えず”とはいうが、夜なかなか眠れなかったり朝早くに目が覚めてしまうなど、不眠に悩む人が実は多い現代社会。

「私たちが2009年に行った全国調査によると、不眠の悩みを持つ成人は5人にひとりにのぼることがわかっています」と話すのは、睡眠学の研究者・日本大学医学部精神医学系主任教授の内山真さん。

 睡眠は、身体と脳の疲れを回復させる生命活動のひとつだが、近年の研究で、睡眠不足が健康に与える悪影響もわかってきた。

「睡眠時間を半分に制限すると、血圧が上昇し、血糖値が上下しやすくなる。つまり、高血圧や糖尿病、メタボリック症候群のリスクが上がることがわかったのです」(内山さん、以下「」内同)

 不眠症の人では、なかなか眠らないことから、この必要な睡眠時間を確保しづらい状況に陥っている。では、なぜこれほど多くの人が不眠になるのか。

「大きな原因はストレス。よく、過労によるストレスが不眠の原因だといわれますが、そうではありません。『こうでないといけない』と不安をあおる睡眠法が急増し、誤った情報がストレスになっていることが多いのです。

 たとえば、必要な睡眠時間は加齢とともに減少します。65才以上は6時間あれば十分。なのに、若い頃と同様『8時間眠らないといけない』と信じている人が多く、眠れないことがストレスになって、不眠に陥るのです。

 そもそも、脳が疲れないと眠くなりません。なのに、活動量の少ない高齢者ほど、昼寝をする。これでは、夜眠れないのは当たり前。また、『22時までに眠ると成長ホルモンが出て美容にいい』と、早くから床に入り、眠れずに悩む女性も増えています。でも、成長ホルモンは決まった時間に分泌されるものではないので、これも無意味なことです」

 一方、就寝前にスマホやPCを使ったからといって、眠れなくなるわけではないともいう。むしろ“メールの返信がこない”などと気にすることの方が安眠の妨げになる。また、不眠の原因には、男女で異なる生活リズムの変化もあげられる。

「男性は、加齢とともに早朝覚醒しやすくなり、朝型になりますが、逆に女性は入眠しづらくなります。なのに、夫に合わせて早くから眠ろうとする。体のリズムに逆らえば、眠れないのは当然です」

 もしかして自分は不眠なのだろうか? 気になる不眠度は、以下をチェック。

・夜なかなか寝付けず、眠るまでに30分~1時間程度かかる
・夜中に何度も目が覚め、その後なかなか眠れない
・夜眠ったはずなのに、日中、眠った満足感がない
・朝早く目が覚めてしまう

 1つでも当てはまり、その症状が週3回以上かつ1か月以上続き、生活に影響が出る場合は医師に相談を。

「日常生活に支障をきたすほどの“不眠症”では、薬も有効。副作用の少ない薬が開発されていますが、特に昨年、新しいタイプの睡眠薬が使われるようになり話題になりました」

 その元となったのは1998年に日本人の研究者が発表した、“オレキシン”という覚醒と睡眠に関わる神経伝達物質。これにより自然に眠りに導く新薬が開発されたのだ。

「オレキシンは、脳を目覚めさせる物質。オレキシンの分泌が増えると、脳内の覚醒システムが活性化し、活動できる状態に。一方、分泌量が減ると、睡眠システムが優位に働きます。つまり、オレキシンは覚醒と睡眠のスイッチのようなもの。このオレキシンの作用を抑制するのが“オレキシン受容体拮抗薬”という新薬です。これまでの睡眠薬は、無理に脳を休ませようとしていましたが、この薬は、覚醒のスイッチのみをオフにすることで、脳内の緊張を解く働きがあるので、自然な眠りを誘導できるのです」

 不眠への対処法としては、どんなことをしたらいいのだろうか?

「就寝前にカフェインや酒を摂らない、朝日を浴びて体内時計を整える、脳を疲れさせるために日中活動する、無理に眠ろうとせず、起きる時間だけを守るなど、まずは生活習慣を見直してみましょう」

 今日からできる具体的な不眠対処法は、以下の通り。

 まず、日中は活動的に動き、脳を適度に疲れさせること。

「睡眠は脳の疲れを取るためのもの。疲れていなければ眠くなりません。専業主婦の場合、家事以外にも日中は外に出て、適度に体を動かすことが大切です」

 就寝前のコーヒーや、寝酒はNGだ。

「睡眠の3時間前からコーヒーやお茶などのカフェイン飲料は控えましょう。また、寝酒は逆効果。脳を刺激するので、深い睡眠を得られません」

 朝起きたら日差しを浴びることも有効。

「起床後に日差しを浴びてから約15時間後、体内時計が働き、自然と体温が下がって眠るための準備をしてくれます」

 就寝時間や睡眠時間でなく起床時間だけを決めるのもポイントだ。

「『22時に寝なければ』『8時間は寝ないと』など決めすぎないこと。起床時間だけ決め、眠くなったら眠るのが理想です。日によって睡眠時間が変わってもかまいません」

 人生の3分の1もの時間を占める睡眠。正しい知識を身につけ、気持ちよく眠りたい。

※女性セブン2015年4月9・16日号

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