■海外の原発事情と日本の「お国事情」
さて、海外にも目を向けましょうか。福島原発事故を受け、ドイツが脱原発を決めた、という事実があります。ドイツは「再生エネルギー大国」とも言われています。その一方、お隣のフランスは原発大国です。実はこの2つの国を足すと、電源構成は日本と同様になるのですね。私はこの前ドイツを訪問し、連邦政府5ヶ所、州政府2ヶ所、産業団体1ヶ所、消費者団体1ヶ所、太陽光発電事業者1ヶ所と計10ヶ所を調査してきました。ドイツの公式見解は「原子力ゼロで再エネ80%」となっていますが、これを基に「だから日本も再エネで!」と言うのであれば、フランスにも行って現状を見るべきです。
再エネ大国になろうとするドイツの横には原発大国のフランスがあります。ドイツだって、フランスの原発で作った電気を輸入しています。なんでここまでドイツとフランスが違うかというと、両国人の「不安」に対する考え方の違いがあります。
ドイツ人は「今日は原子力が安全だった。明日も多分安全だ。でも、100年後の今日、事故が起こるかもしれない」と考える。一方、フランス人はそうは思わない。同じヨーロッパ人でも、再エネ・原発に関して考え方が違い過ぎます。アメリカのマサチューセッツ工科大学のリチャード・レスター教授は、私との対談で「まず、かなりの数の原子炉を再稼働させること、それから福島第1原発の除染・廃炉作業の推進、三つ目として原子力を技術的には競争力を持たせよ」と答えています。
その一方、ドイツでは「再エネは素晴らしい」と言う。もうね、考え方は国によって違うんですよ。ドイツがいい、とかフランスがいいとかではなく、日本は、日本のことは「自分で決めろ」ということなんです。日本には日本独自の事情があり、簡単に外国のマネをするワケにもいかない。本当に自分達で考えなくてはいけない。
ドイツに行っても世界のエネルギー事情は分かりません。隣にフランスがあるから。両方を見て、初めて参考になります。その真ん中にいるのがアメリカとイギリスです。日本も、2011年3月10日までは両国と同様に「真ん中」でした。
韓国は原発推進に舵を切りましたが、その理由は日本と同様に韓国内で資源が採れないからです。ただし、日本よりももっと深刻なのは、北朝鮮と地続きなので、安全保障の問題がある点です。とにかく、エネルギーを自給しなくてはまずいのです。日本は資源がないから太平洋戦争突入したわけで、そういったエネルギー重視せざるを得ない事情も忘れてはいけません。あれは70年前という遠い昔のことだと思ってはいけません。
日本には2000年の歴史があるなか、70年というのは、全体から考えれば、ほんのちょっとの話です。そう考えると、70年しか平和が続いていない状態ともいえ、むしろ70年も続いたのは奇跡でしかありません。いつ資源をめぐってバトルが始まるか分からないんですよ……。アメリカみたいな遠いところからシェールガスを買います――みたいなおめでたいことを言っている場合ではありません。