2015年の日本経済は、為替が1ドル=120円台前半を維持し、日経平均が約2000円上昇して2万円台に接近した1年だった。株価について、ぐっちーさんこと投資銀行家の山口正洋氏、慶應義塾大学ビジネススクール准教授・小幡績氏、双日総研チーフエコノミスト・吉崎達彦氏の3人の経済論客が意見を戦わせた。
吉崎:2016年の日本経済を展望すると、外部環境だけ見たら、日本ほど安心できる国はないですよ。
山口:同感ですね。日本で大規模なテロが起きるというのも非現実的ですし、何より景気がよくなっている。
吉崎:原油安で日本の化石燃料調達コストは2013年度と比較して約10兆円減る見通しで、その下支え効果がある。経常収支の黒字も2013年度の8000億円から17兆円規模にまで改善している。ただし為替は、1ドル=110円台の円高になると見ています。そうなると輸出企業の比率が高い日経平均株価はあまり期待できない。
株式市場の時価総額は名目GDP(国内総生産)のプラス2割までが適正とされるので(※注)、現状の水準でほぼいいのかなと。
【※東証1部の時価総額は約580兆円。2015年度の名目GDPは約500兆円の見通し】
山口:それは著名投資家のウォーレン・バフェットが一番頼りにしているといわれる水準で、「バフェット指数」と呼ばれてますよね。
吉崎:そこから考えると、日経平均は2万円前後で横ばいといったところでしょうか。
小幡:いろいろな指標を見ても日本の物価は安すぎますから、どこかで修正されるでしょう。アメリカの利上げが実施されたとしてもせいぜい年2回ほどで小幅でしょうから、日米の金利差もさほど拡大しない。日銀の追加金融緩和はもうないでしょうから、1ドル=115円くらいが妥当で、場合によっては105円くらいまで行く可能性もある。株価は下がると思いますね。特に2015年後半は日本だけが上がったので、その分、2016年は崩れやすい。
日経平均でいえば1万8000円前後で、2015年8月の世界的な株安のようなショックがあれば、1万6000円台もあり得ると思います。