政治家が動こうとしないなか、「三者会談」で決めた新たな方針は、皇室自らが動くことだったと皇室ジャーナリスト・神田秀一氏は推察する。
「皇族方は政治的な発言は御法度ですから、皇室典範改正に関して自由に意見を発言できません。そんな中で、ご自分たちが出来ることを実行することで、何かを変えたいという“新たな皇室”の姿が見えた気がしました」
『皇后の真実』などの著書があるノンフィクション作家の工藤美代子氏も今回の神武天皇の式年祭での天皇家の姿に胸をなでおろす。
「皇室の将来を考えると喜ばしく、意義があること。皇族方がそれぞれに考えられ、同じ未来を見始めた象徴的な出来事になってくれれば良いと思います」
皇室の思いを察知したのか安倍政権もついに重い腰を上げようとしているという。自民党幹部が言う。
「昨年の“安倍談話”問題(※注)以降、安倍首相と天皇陛下との間にすきま風が吹いており、皇室問題には手を付けたくないというのが総理の本音だったのではないか。
【※注/天皇は終戦記念日に述べられたおことばで、初めて「深い反省」に言及。その前日に「戦後70年談話(安倍談話)」を発表し、それまで「(過去の村山談話と)同じことをいうなら出す必要はない」と歴史認識の転換を臭わせていた安倍首相は天皇のおことばに神経を尖らせていたとされる】
だが、このままでは悠仁親王が成人された頃には、皇室に皇族が誰一人残っていないという状況も起こりえます。
その問題を解決するために、夏の参院選後に野田政権時とは全く異なる有識者会議を発足させて女性宮家創設の検討に動き出すようです。陛下の孫である眞子さま、佳子さま、愛子さま、3人の内親王に一代限りの宮家を認めるかが議論の中心になる。安倍首相は慎重に議論を進める姿勢ですが、菅官房長官を中心に柔軟に対応することになる」
とはいえ、これまで女性宮家の創設は俎上にのっては消えてきた。また、仮に女性宮家が創設されても、男系男子が誕生しなければいずれ皇統が絶えるという根本的な問題は解決されない。
※週刊ポスト2016年4月22日号