西川公也・衆院TPP特別委員会委員長(元農水相)が出版する予定だった『TPPの真実―壮大な協定をまとめあげた男たち─』が一転、「出版未定」に追い込まれ、野党がゲラを入手して追及するなど、「暴露本政局」とまで呼ばれる大騒ぎになっている。
いったいどんなヤバイ内容なのか。入手した476ページにも及ぶゲラを読んでみて驚いた。クソつまらないのである。
すでに報じられている交渉の経緯がダラダラと書かれるだけで、農協に対してもアメリカに対しても暴露といえるような内容はほとんどない。よくある政治家の自画自賛本の類だ。
ただし、唯一の読みどころといえるのが、番記者たちとの関係を記した箇所だ。秘密交渉における政治家と記者との「緊張感あるやり取り」とはどのようなものなのか。引用すると──。
〈滞在中は毎晩記者懇談会を開催しました〉
〈記者が持ち寄るアルコールは、大半がウイスキーでした〉
〈記者懇談会にはゲーム形式で「質問タイム」という時間を設けました〉
〈記者同行も散歩のことを心得ていて、早起き組は同行してくれました。散歩しながら他愛のない雑談をして必ず朝食も一緒に食べたのです〉
〈サンドウィッチを頬ばりながら、TPPや農政、はたまた噂話や恋愛話まで皆でわいわい話すのです〉
何とも楽しそうだ。政治家と記者の激論もなければ、記者同士の取材争いもない。ただ毎日、西川氏を囲んで記者たちみんなで朝飯を共にし、夜も酒を酌み交わし、噂話や恋愛話のついでにTPPの話を漏らしているだけ。
これぞ、日本の記者クラブ、という見事なまでの談合ぶりが暴露されている。“発禁本”になった理由はこれだったりして。
※週刊ポスト2016年4月29日号