ビジネス

トヨタが米で創出した雇用は13万6000人どころではない

トランプ発言に異議を唱える大前氏

 ドナルド・トランプ大統領は、選挙後の初会見で「過去最大の雇用を生み出す」と冒頭で述べ、日本を名指しで批判した。Twitterでは、トヨタのメキシコ工場新設を恫喝めいた口調で批判している。経営コンサルタントの大前研一氏が、雇用創出の面において、トランプ大統領の発言がいかに的外れであるかについて解説する。

 * * *
 フォードはトランプ氏に「恥知らず」と批判されたメキシコの新工場建設計画を撤回し、米ミシガン州の既存工場に7億ドルを投じて700人ほどの新たな雇用を創出すると発表した。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)もミシガン州とオハイオ州の工場の設備増強に10億ドルを投じ、約2000人を追加雇用すると発表した。しかし、実はいずれも直近に削減した人数を戻したにすぎない。

 これまでアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)、フォード、FCAは、リストラに次ぐリストラでひたすら雇用を削減してきた。一方、すべての製造業の中で、この30年間に最もアメリカ国内で雇用を創出したのはトヨタである。豊田章男社長は「アメリカで13万6000人を雇用している」と述べ、過去60年間で220億ドルを投資した実績を強調したが、これもまた「真実の姿」ではない。

 というのは、トヨタは傘下の部品メーカーもごっそりアメリカに連れて行ったからである。それも含めればトヨタがアメリカで創出した雇用は13万6000人どころの話ではないのである。しかも、その高品質な部品をアメリカの自動車メーカーに対しても供給することを認めたから、ビッグスリー(GM、フォード・モーター、クライスラーの米国3大自動車メーカー)が甦ったのである。

 逆に、メキシコ生産で最も出遅れたのがトヨタである。トランプ大統領はメキシコからの移民を排除すると言うが、それなら自動車メーカーなどにはメキシコに工場を新設させたほうがよい。そうすれば、メキシコ人は自国内で働くことができるからだ。実際、私は昨年、グアナファト州へ視察に行ったが、好景気に沸いていてアメリカに行きたいという人は皆無だった。

※週刊ポスト2017年2月17日号

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン