国際情報

中国ウォッチャー 尖閣問題で「報復関税を30%かけろ」

尖閣諸島での衝突は、国内で大きな議論となっている。中国ウォッチャーとして知られ、著書に『中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか』などがある評論家の宮崎正弘氏はこう分析している。
******************************

尖閣諸島での衝突は、中国が日本の領土に攻め入る絶妙のタイミングだった。なぜなら、日本は民主党代表選で政治空白が続いており、普天間問題をはじめ日米関係が冷却していた時期だったからだ。民主党政権は中国に外交の力量を試された格好だ。

しかし、いくら“外交素人集団”であっても、今回の事件は120%中国に非があるのだから、傲岸不遜な行動には強硬手段で抗うべきだった。船長を早く釈放し過ぎた感は否めない。

どうやら船長釈放までには、水面下で米国が解決策を斡旋していたフシがある。キャンベル国務次官補はクリントン国務長官が前原外相と会談する前から、「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用範囲である」と明言していた。たとえリップサービスであっても、第5条は米国の日本防衛義務だから法的な確約も取れていた。もっとこの発言を重く捉えて抗議していれば、中国も引っ込んだかもしれない。

しかし、日本は米国の提案した落としどころをあっさりと呑んでしまった。だからこそ、船長の釈放後に米国務省は「あれは正しい判断だった」と日本の国民感情を逆なでするような発言をしたのだろう。

また、レアアース輸出停止の件では、長い目で見れば中国のほうが経済的な損失は大きいはずなのに、8月時点のGDPで日本を超えたこともあり、「もう日本に何の遠慮もいらない」という強い自信が窺えた。逆にいえば、経済力とカネさえあれば中国を支配できると考えていた日本政府や日本企業の認識の甘さが浮き彫りになったのである。

しかし、中国に報復措置を取らなければ、領土問題にしても経済問題にしてもなめられる一方だ。中国からの輸入品に対して30%の報復関税をかけるとか、来日が予定されているダライ・ラマ14世と菅首相が面談してもいい。尖閣諸島を海上保安庁任せにするのではなく、海上自衛隊に24時間警備させるのも有効だろう。

2005年に中国で起きた反日暴動と違い、今回は自らの領土をかすめ取られる危機感から、普段は外交に関心の薄い、多くの国民が中国の横暴ぶりに腹を立てた。日本に眠っていたナショナリズムを目覚めさせてくれたという意味では、むしろ「中国よ、反日、ありがとう」というべきだろう。

※週刊ポスト2010年10月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
イセ食品グループ創業者で元会長の伊勢彦信氏
《小室圭さんに私の裁判弁護を依頼します》眞子さんの“後見人”イセ食品元会長が告白、夫妻のアパートで食事した際に気になった「夫としての資質」
週刊ポスト
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
《ルフィ事件》「腕を切り落とせ」恐怖の制裁証言も…「藤田は今村のビジネスを全部奪おうとしていた」「小島は組織のナンバー2だった」指示役らの裁判での“攻防戦”
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ツアーに本格復帰しているものの…(左から小林夢果、川崎春花、阿部未悠/時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》川崎春花、小林夢果、阿部未悠のプロ3人にゴルフの成績で “明暗” 「禊を済ませた川崎が苦戦しているのに…」の声も
週刊ポスト
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト
山本アナは2016年にTBSに入局。現在は『報道特集』のメインキャスターを務める(TBSホームページより)
【「報道特集」での発言を直撃取材】TBS山本恵里伽アナが見せた“異変” 記者の間では「神対応の人」と話題
NEWSポストセブン