国際情報

大前氏「ネットとリアル併存」のアマゾンがライバル企業を砕く

 現在、グローバルIT企業の成功例として、日本のメディアで盛んに取り上げられる「双璧」が、アップルとグーグルだ。

 前者はiPodやiPhone、iPad、後者はOS(基本ソフト)のアンドロイドや自動走行車プロジェクトなどの商品・サービスが話題を集め、そのカリスマ経営者や自由な企業文化についての報道も枚挙に暇がないほどである。

 だが、いま大前研一氏が最も注目しているのは、アメリカ最大のネット小売業アマゾン・ドット・コムの戦略だという。そこにはアップルやグーグル、あるいは同じネット小売業の楽天にはない「強力な武器」がある。以下、大前氏が解説する。

******************************
 リアルとネットを併存させる場合、価格をどうするかという問題が出てくる。アメリカ最大のネット小売業アマゾン・ドット・コムはネット専業の会社に勝つために、リアル店舗よりもネットのほうを安くすることはできない。
 
 そんなことをしたら、リアル店舗にお客さんが来なくなるからだ。要は、どちらも同じ価格にするしかないのだが、それでは現状と同じで、コストが低いネット専業の会社にはかなわない。結局、ネットに参入するなら、命がけでネットのお客さんの満足度を高めていかなければ、生き残ることはできないのである。

 このようにアマゾンは、深謀遠慮の戦略をもってネット小売業を展開してきた。目下、ジェフ・ベゾスCEOの悩みは、右脳型商品(微妙な色合いや質感が決定的な意味をもつ商品、たとえばアパレルや靴、家具、食品など)をどうやって売るかということだが、最近は日本のZOZOTOWN(ファッション通販サイト)のように右脳型商品でも成功事例が出てきたため、今後はそうした専門店を買収していく可能性もある。

 そうなれば「リアルとネットの相乗効果を引き出す」などと中途半端な路線をいく従来の小売業は、アマゾンの前に砕け散るかもしれない。創業時に「世界最大の小売業をめざす」と宣言したべゾスの野望は、すでに夢物語ではなくなりつつある。
 
※週刊ポスト2010年11月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
ナンバープレートを折り曲げ集団走行する「旧車會」=[福岡県警提供](時事通信フォト)
《各地で増える”暴走”》駐車場を勝手に旧車會の集合場所とされた飲食店主「100台以上も…他のお客さんが入って来られん」と怒り
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン