ライフ

法律によるカルテルで理髪店の定休日は一緒になった

 身近にある役所の「おバカ規制」。彼ら役人による規制は往々にして、民間企業の利益や国民の利便性を損ない、税金を無駄遣いしている。元通産官僚で、行革担当大臣 の補佐官を務めた、「政策工房」の原英史氏が、理容店と美容店の法規制について解説する。

 * * *
 理髪店と言えば「月曜定休」と思いがち。実は愛知県のように「火曜定休」が多いところもある。しかし、なぜ地域ごとに、共通の定休日があるのか? 起源は諸説あるが、これにも「規制」が絡んでいる。

「環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律(環衛法)」という法律がそれ。

環衛法は、戦後、理髪店や美容院、クリーニング業などの業界で過当競争が生じたことから、1957年「運営適正化」を目的に定められた。この法律によれば、都道府県ごとに「同業組合」を結成して「適正化規程」を定め、営業日・営業時間・料金などを決めることができる。〈私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定は、適正化規程及び適正化規程に基いて行う組合員の行為には、適用しない〉(第十条)とあり、本来は独禁法で禁止されるカルテルを認めたのだ。

こうして、都道府県ごとに「理容組合」や「美容組合」が結成され、「規程」または指導により定休日が決められることになった。組合は法律上「任意加入」と書いてあるが、事実上は「強制加入」に近かった。

例えば1960年に厚生省環境衛生部長名で各都道府県に出された、いかにも役所が出しそうな表題の通達、「適正化規程の適正なる実施について」には〈員外者が存する場合には、(中略)できる限り組合に加入するよう取り計らわれたい〉とある。また、環境衛生金融公庫(現在は日本政策金融公庫)の低利融資は組合加入が条件。結局加入せざるを得ないような仕掛けがいくつもあった。このため「月曜定休」なども、事実上ほぼ強制的に適用されたわけだ。

さすがに「適正化規程」は1998年までに全ての都道府県で廃止されたが、法律そのものは、「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(生衛法)」と名前を変え存続し、その下で各都道府県の理容組合・美容組合も存続している。

それらが髪を切る利用者にとって“見えざる手”となり、理髪店、美容院を縛っているのである。 

※SAPIO2010年11月24日号

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン