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ダニエル・ピンク氏が提唱する「モチベーション3.0」とは

 好きな時間にやりたい仕事をさせると部下は無責任な行為に走るのではないか。そう案じてしまう上司は多い。だが、それは「2.0時代」の考えにとらわれている、と世界中のビジネスマンに多大なる影響を与えるダニエル・ピンク氏は断言する。ポスト・ドラッカー時代、部下に与えるべきものとは――。

 * * *
 コンピュータに例えるなら、現在のOSのバージョンは「2.0」。バグがあるため、早く「3.0」にアップグレードしなければならない。それを私は「モチベーション3.0」と呼んでいます。自ら何かをなしえたいという内発的動機に基づくOSです。「3.0」を実現させるためのキーワードは次の3つです。

【1】好きなことを自分の方法で自己決定できる「自律性」
【2】より良く向上したいと思う「マスタリー」(熟達)
【3】自分ではなく大きな何かに貢献しようとする「目的」

 これらの条件を備え、社員の自律性を重んじながら業績を伸ばしている会社は、既に複数出てきています。

 例えばオーストラリアのソフトウェア会社、アトラシアン。四半期に一度、丸一日、自分のやりたい課題に取り組める“フェデックス・デー”(※注)を設けています。最近ではツイッター(アメリカ)もフェデックス・デーならぬ“フェデックス・ウィーク”(同社ではハックウィークと呼ぶ)を採用して話題を呼びました。

 アメリカのネットフリックスというオンラインDVDレンタル企業も革新的な試みをしています。同社には休暇規定が一切ない。自分の仕事をしている限り、何日休んでもよく、いつ休暇を取っても構わないのです。

 日本でも3.0を採用している企業はあります。ヨガ、茶道など非日常な体験をギフトとしてプレゼントするベンチャー企業、ソウ・エクスペリエンスギフトでは、与えられた仕事をする限りは出社退社時間が自由で、加えてサイドビジネスまで許可されています。

 これらの企業では、無報酬にもかかわらず新規アイデアが次々と発案され、製品化がされています。就業時間の一部を自由に使える「20%ルール」によって、3M社からポストイットが、グーグル社でGメールが生まれたのも有名な話です。

 もちろん彼らだって十分な給料はもらっており、それが働く意欲のベースになっています。でもモチベーションの根底にあるのは自分の心がワクワクするから、社会にとって大切だから――といった内発的動機です。

※注:フェデックス・デ―/24時間かけて日常業務とは無関係の自分の好きな課題に取り組み、その成果を発表する。24時間で荷物を届ける運送会社「フェデックス」にちなんで命名された。

※週刊ポスト2010年12月10日号

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