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仙谷氏による政治主導発揮 こんにゃくゼリー以外にもあった

 仙谷由人・官房長官の「政治主導」といえば、本誌が詳報してきた「こんにゃくゼリーの堅さと形規制」がすっかり有名になったが、これは「もう一つの実績」といえるかもしれない。11月に行なわれた「事業再仕分け」では、これまでの仕分け作業で「廃止」などとされながら、名前を変えてこっそり存続されていた無駄な事業などが追及された。その項目の一つに挙がったのが、「国保組合への補助金」である。

 医師、弁護士などの個人事業や、建設、たばこ販売、自転車販売などの中小・零細が多い業種ごとに作られた健康保険組合に対する国庫補助は、165組合に対して年間2700億円余りにのぼる(いずれも平成20年度)。サラリーマンの健保組合などと違い、“弱い立場の人たちの健康を守る”という考え方で支出されてきたものだが、実際には潤沢な資金で法定額以上の積立金をため込む組合が多数あったり、入院費、治療費の自己負担が事実上ゼロといった夢のような厚待遇だったりするケースも多い。

 仕分け対象になるのは当然なのだが、そもそも国保組合が手厚い保護を受けてきた背景には、それぞれの組合が地元の政治家の支援に動き、見返りに補助金確保を求めてきた背景がある。要するに、もともと政治案件なのである。仙谷長官も、国保組合の中心的存在である建設業従事者の団体から選挙で支援を受けてきた一人だ。同氏は昨年10月の全国建設労働組合総連合の大会に出席し、「皆様の力で議席を取らせていただいた。建設国保は手厚く守る」と、露骨に支持母体への利益誘導を宣言していたほどだ。

 こういうことは有言実行が仙谷流。自ら行政刷新相として担当した昨年の事業仕分けでは、国保組合への補助金は、対象からさっさと外されたのである。そして今回、再仕分けでようやく俎上に載せられたわけだが、その結果は「補助廃止も含めた見直し」と、厳しい内容になった。が、ここから怪しい政治主導が見え隠れする。仕分け結果をよくよく見ると、見直し対象とされたのは「所得水準の高い国保組合への補助金」に限定されている。恐らく医師や弁護士などの組合を想定しているのだろう。

 とすると、仙谷氏が「手厚く守る」と意気込んでいた建設国保はどうなるのだろう?

 厚労省国民健康保険課に訊いてみると、あっさりこう教えられた。「建設国保は見直し対象になっていません。平均所得が低いからです」―― やっぱり。“仙谷内閣”の“政治主導”の象徴である事業仕分けの正体とは、こんなものである。

 ちなみに、仙谷氏の地元の徳島建設産業国保は、165組合中、保険給付費に対する国庫補助割合が24番目に高く(56.4%)、なんと入院費用の自己負担がゼロという、サラリーマンや市町村国保加入者からは考えられない制度で運営されている。

※週刊ポスト2010年12月10日号

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