国際情報

ウィキリークス内紛で創設メンバーが2011年中に暴露本を出版

 大量の機密文書を含む、25万点のアメリカの外交公電を公表し続けている「ウィキリークス」。しかし、未だその実像はよく知られていない。創設者のジュリアン・アサンジ氏とは何者であり、ウィキリークスとはどのような組織なのか。

 それは、報道や国家機密の在り方を今後どう変えていくのか。立ち上げ直後の2007年頃からウィキリークスの存在に注目し続けてきた、国際政治アナリストの菅原出氏が読み解く。

 * * *
 ウィキリークスが発展していく中で、内部での不協和音も聞こえ始めた。2010年末にアメリカの外交公電を公開した時、アサンジ氏は今までとは少し違った手法を取り入れた。情報を一挙に公開するのではなく、小出しにしたのだ。情報を徐々に公開することで、ウィキリークスは世間の注目を長期的に集めることができる。「経営者的」な発想がアサンジ氏の頭の中に芽生えてきたのだろう。

 こうした商業主義的な発想に対して、アサンジ氏の右腕である創設時からのメンバー、ダニエル・シュミット氏は猛烈に反発した。また、大手新聞社らとの協力体制についても、シュミット氏には契約内容が何も知らされてはいなかった。

「ガーディアンとはどのような取り決めをしたのか、教えろ」

 怒り心頭に発したシュミット氏はこう言ってウィキリークスを辞めたとされる。彼は内部告発プロジェクト「オープンリークス」を独自に立ち上げ、ウィキリークスの内部を告発する暴露本を2011年中に出版する予定である。

 こうした内紛的要素が今後どうなっていくかは定かではないが、ウィキリークスが国際政治の「プレーヤー」としての興味深い存在となったことは間違いない。アサンジ氏は国際政治でプレーするための一つの手法を確立したのである。

 今後は世界各地でウィキリークスのような告発サイトが誕生するだろう。ウィキリークスには今、1日あたり30件もの内部情報が届くという。年間にすれば1万件のペースだ。つまり、彼らは持ち込まれる情報をさばききれていない。現在のところウィキリークスのスタンスは「反アメリカ」とはっきりしているから、そこにつながる情報が優先して公開されていく。

 なので今後は、反ロシアや反中国など、アメリカ以外の政府に対抗するスタンスを明確にした別の内部告発サイトが現われるだろう。

 政府や企業の側も防衛策を講じるであろうが、それでも内部告発をしようという人は出てくる。これまでも、そうした人々が内部情報を新聞やテレビ、雑誌などに提供するケースはたくさんあった。ただ、そこにインターネットという便利なツールが発明されたことにより、内部情報を容易に持ち込める環境とインフラが完成した。

※SAPIO2011年1月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト