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高齢化で“姥捨て山”状態の中国が恐れるインターネット世論

 国際ニュース解説の達人、池上彰氏が、経済発展を続ける中国の抱える問題について分析する。

 * * * 
 GDPで日本を抜き去り、近い将来アメリカに追いつくほどの経済発展を続ける中国も、国内には様々な“爆弾”を抱えています。その一つが高齢化です。中国は65歳以上の人口がすでに1億人を超え、日本の総人口に匹敵する規模にまで膨らんでいます。さらに1950年代の毛沢東の「大躍進政策」の失敗による人口激減や、一人っ子政策の影響があり、2012年から人口減の時代に入ると言われています。

 通常、少子高齢化は年金や医療といった社会福祉の発達した先進国に起こる現象です。ところが中国は、社会福祉がほぼ未整備のまま高齢社会となっています。かつて世界のどの国も経験したことのなかった未知の領域に進むわけです。特に農村部は悲惨で、年金がもらえず身寄りもない高齢者が集う“姥捨て山”状態になりつつあります。

 他にもインフレ懸念や貧富の差の拡大など、国内に多くの矛盾を抱える中国。噴出する不満を抑えつけるには、中央集権を徹底するしかありません。習近平の内政手腕が注目されますが、その舵取りに大きな影響を与えるのが、インターネットの世論です。

 前述したように、中国の政治家は、国民から選挙で選ばれたわけでなく、すべては党の人事で決まります。ところがすでに中国には4億人を超えるネットユーザーが存在し、その声を政治家は無視できなくなっています。ネットの声を唯一の世論として必要以上に恐れ、一喜一憂するそれが中国政治の現実です。

 2010年11月に横浜で開かれたAPECでも、菅直人首相と会談した胡錦濤主席は、テレビカメラの前では厳しい顔を崩しませんでした。日本の首脳に笑顔を見せたら“弱腰”とみなされ、致命傷になりかねないからです。ところが、撮影が終わると笑顔に戻りました。明らかにテレビを意識して“強面”を貫いたのです。

 こうしてみると、単に中国側に日本の主張をぶつけるのではなく、巧みに日本の言い分を認めさせるような日本外交のあり方が見えてきます。 

※SAPIO2011年1月26 日号

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