ライフ

別れた妻の名義となっている家を勝手に売却しようとする元夫

 元妻の名義となっている家を、8年前に離婚した元夫が勝手に売却しようとしている。これは可能なことなのか? この質問に弁護士の竹下正巳氏が答える。

【質問】
 離婚して8年です。最近、元夫が私の家を勝手に売ると話しています。元夫には借金が原因で家を出ていった経緯があり、家のローンなども私が実家に頼んで支払ってもらい、現在私が実家に少しずつ返金しています。家と土地は9年くらい前に私の名義に変更していますが、元夫が勝手に家を売却するようなことは可能なのでしょうか。守る方法を教えてください。(50・会社員)

【回答】
 9年前に土地建物の名義をあなたのものにし、離婚して8年ということですから、離婚前にあなたの名義にしたのですね。元の所有は誰ですか。元夫であるとすれば、婚姻中に元夫があなたに贈与または売買で所有権を移転したということでしょうか。

 民法754条では、夫婦間でした契約の取消権を認めていますが、これは婚姻継続中であれば取り消せるということであり、既に離婚したあなたがたの場合には適用されません。

 また、あなたの名義で買ったとしても、あるいは事情があって夫からあなたの名前に変えたとしても、自宅不動産が夫婦にとって実質的な共有財産であれば、離婚に際して財産分与の対象になり、元夫は幾分かの持分を要求する権利があります。しかし、財産分与請求は、離婚して2年を経過するとできなくなりますから、元夫には財産分与請求権に基づく権利もありません。

 元夫とあなたの間に、他に特別な約束があれば別ですが、そうでない限り、他に元夫が権利を主張する根拠を思いつくことができません。そうすると、あなた名義の土地と建物を元夫が勝手に売ることはできず、元夫の「勝手に売るような話」は、正当な権利の行使に基づくものではないということになります。そうなれば犯罪の可能性もあります。根も葉もない噂ではなく、具体的な動きがあるようであれば、警察に相談されたほうがよいでしょう。

 別れた配偶者との間で、トラブルが起きることは珍しくありません。悪感情を持って離婚した場合には確執も強く、当事者同士で解決することは困難なケースがほとんどです。事案によりますが、弁護士、家庭裁判所、警察あるいは婦人相談所などに相談されることをおすすめします。

【解説】
竹下正己弁護士
1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2011年2月3日号

関連キーワード

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン