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接待終了後、酔って転んでケガしても労災対象になると弁護士

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「接待の帰りに転んでけがをしたのですが、通勤災害にはなるのでしょうか?」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 夕方から取引先の接待があったのですが、終わって上司と別れたあと、酔っていたため階段で転んで足首をけがしました。けがは軽かったのですが、病院で治療を受け、会社を2日休みました。このような場合、通勤災害として認められるのでしょうか。通勤途中の事故について教えてください。

【回答】
 通勤災害とは、労働者災害補償保険法第7条第1項第2号の定める「労働者の通勤による負傷、疾病、傷害又は死亡」であり、「通勤による」とは、事故が、その通勤に通常伴う危険として具体化したものだといえることが必要です。その通勤の意味については、同条第2項及び第3項で定義しています。

 そこで通勤災害として、保険給付を受けるためには、まず定義された通勤途上であることが前提になります。この場合、通勤途上とは、「就業に関し」「住居と就業の場所との間の往復」であることを原則としますが、多少の経路変更でも認められる場合があります。

 ご質問の場合は、上司の指示により接待をした場所から帰宅途上で起きた事故です。まず、これが「就業に関し」といえるかどうかですが、社命で出席するような場合、業務になると解されています。従ってその場から自宅に帰る途中であれば、通勤途上といえます。そして階段から転落することは、けんかでけがをしたなどの故意の事故ではなく、通勤事故の典型です。そこで通勤災害として労災の対象になると思います。

 しかし、接待が終わり、得意先が帰ってからも店に腰を据えて長時間飲み続けるなど、仕事ではなく個人の楽しみの飲食になってしまうと、その後の帰宅は、「就業」との関連性がなくなったとして、労災を否定される可能性があります。
 
 また、帰宅は合理的な経路及び方法で行なわれる必要があります。不必要な遠回りをして事故に遭っても、保護されません。もっとも一切寄り道ができないのでもなく、日用品の購入などで店に立ち寄ったりしても、通勤途上であることを否定されません。実際に事故に遭ったときは、都道府県の労働局や労働組合などに相談するのがよいでしょう。
 
※週刊ポスト2011年2月18日号

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