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兄の介護をしていた兄嫁が病気に 弟に面倒見る義務あるか

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は、「兄の介護をしてきた兄嫁が病気になったのですが、今後の責任はどうなるのでしょう?」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 兄は寝たきりなので、兄嫁がずっと介護をしてきましたが、その兄嫁も病気になってしまいました。兄夫婦には子供がおらず、兄嫁のほうには兄弟がいません。弟の私は遠方に住んでいるため、面倒を見るのは無理です。このような場合、これからの責任は誰にあるのでしょうか。

【回答】
 民法877条1項で、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。扶養を必要とする人がいる場合、その兄弟には扶養の義務があります。そこで、あなたは兄さんから扶養の相談があったときには、対応する義務があります。もし他にも兄弟がいれば、同様に扶養義務を負い、扶養の順番や方法、内容について話し合って決めます。

 話がつかないときは、家庭裁判所が審判で決定します。扶養の方法や分担を決める基準については、民法で、「扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める」と定められています(879条)。すなわち「資力その他一切の事情」で扶養方法や分担を決めるのです。

 あなたは遠方に住んでいるということなので、日常生活の面倒は見られないかもしれませんが、金銭の支払いによる扶養はできないことはありません。扶養の程度を決める上で、扶養義務者の収入の余力が重視されます。全くゆとりのない生活をしている人に負担させることはできません。しかし生活にゆとりがあれば、支援してあげてください。
 
 義姉さんは兄弟ではありませんから、あなたが当然に扶養義務を負うということはありません。しかし、前記の民法877条の2項で「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」と定めています。
 
 義姉さんは2親等の姻族としてこの範囲内ですから、家庭裁判所が特別の事情を認めれば、扶養の義務をあなたに課すこともあり得ます。しかし、この特別の事情とは、親兄弟同様に義姉さんから支援を受けていた過去があるような、かなり限定された場合だけです。

※週刊ポスト2011年3月11日号

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