国内

大前研一氏 電気自動車を格安にする電池パック方式を提案

 エコカー開発で日本車メーカーは圧倒的な優位に立ってきた。だが、中国で本格的な電気自動車(EV)の開発・導入政策が進めば、一気に日本が後塵を拝する事態もありうる。日本勢が今後も主導権を握るための“新EV革命”を大前研一氏が提唱する。

 * * *
 現在のプラグイン式のEVは、充電に時間がかかるという問題がある。

 たとえば、日産の「リーフ」は、急速充電器で0%→80%の充電に約30分、家庭用200Vコンセントで0%→100%の充電に約8時間かかる。三菱の「i-MiEV(アイ・ミーブ)」も、パワーダウン警告灯点灯後からの充電時間が、急速充電器で80%充電に約30分、フル充電に家庭用200Vコンセントで約7時間、家庭用100Vコンセントで約14時間だ。

 フォード・モーターが「充電時間はライバルEVの半分」とアピールしている来年発売予定の「フォーカスエレクトリック」でも、フル充電には240Vチャージャーを使って3時間かかる。これでは自宅と道路沿いのあちこちに充電施設が必要になるうえ、もし充電インフラが整ったとしても、充電に30分以上かかるようでは非常に不便だ。

 そこで私は、充電インフラと充電時間の問題を解決してEVの普及を早める方法を提案したい。それは、EVの電池を「カセット式」にして簡単に交換できるようにすることだ。そして既存のガソリンスタンドに充電済みの電池パックを大量に並べておく。

 EVユーザーは電池の残量が少なくなったら、ガソリンスタンドに行って充電済みの電池パックに交換するだけ。取り外した電池パックは、スキューバダイビングのタンクに空気をチャージするように、ガソリンスタンドが充電しておく。これなら新たに充電インフラを造る必要はないし、ユーザーが充電時間を待つ必要もない。

 しかも、この方法だとEVの価格を大幅に引き下げることができる。いまEV用のリチウムイオン電池は100万円ぐらいする。仮にEV全体の価格を235万円(量産化で安くなった場合)とすると、電池が100万円で、それ以外の部分が135万円というコスト構造になっている。

 だが、電池をカセット式にすれば、車と一緒に電池を買う必要がなくなる。電池パックは借り物であり、ユーザーはガソリンスタンドで交換した時に2000円なり3000円なり、1回分の使用料を払うという概念だ。その金額は、電池の製造コストと寿命、充電にかかる電気代、脱着作業の手数料などの合計から逆算して割り出せばよい。これで300kmぐらい走行できれば、一気に普及が進む。電池の製造コストも、日本の自動車メーカーが標準化に合意して大量生産すれば安くなる。

 つまり、カセット式ならEVの価格は235万円ではなく135万円になるのだ。これまでにもカセット式電池パックの活用は各社が模索しており、現実には規格の標準化などの課題も残る。

 それでも、この方式は充電インフラと充電時間の問題を克服できるうえ、EVの価格が一気に安くなって普及に拍車がかかり、経営が苦しいガソリンスタンドも潰れずに済む。まさに“一石三鳥”なのである。

※SAPIO2011年3月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
間違いだらけの議事録は「AIのせい」(写真提供/イメージマート)
《何でもAIに頼る人たち》会社員女性が告白「ケンカの後、彼から送られてきた”彼女の方が悪い”とAIが回答したスクショ」ほどなく破局
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン