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医薬品のネット販売規制 「安全のため」は建前だったか

 行政改革や規制緩和は、実は政治家や官僚にとって“おいしいテーマ”であり続けてきた。業界の既得権を見直すぞと揺さぶりをかけ、最後は手心を加えて「本領安堵」してやることで業界に恩を売り、献金や天下り先を増やすのである。では、菅政権の「規制仕分け」はどうだったか。

 官僚利権ハンターで「政策工房」社長の原英史氏が「規制仕分け」の現場に乗り込んだ。

 * * *
 3月6~7日の2日間にわたって、蓮舫・行政刷新相のもとで「規制仕分け」が開催された。 今回の仕分けを傍聴して、仰天した発言が「医薬品のインターネット販売規制」をめぐる議論の中で出てきた。

 規制緩和を名目に2009年に施行された改正薬事法で、厚労省はそれまで認められていた医薬品のネット販売を「通販で薬を扱うのは安全が確保できない」と一部の商品を除いて禁止した。規制を「緩和する」と言いながら逆に強める役所の常套手段である。そうした規制を改革すべきかが今回議論されたのだ。

 仰天した発言とは「規制改革担当」の平野達男・内閣府副大臣のものだ。規制に切り込む立場にあるが、なぜか逆の立場を取り、「インターネットでの販売が拡大すると、地方の薬局がつぶれてしまう。これは政治的な問題だ」と繰り返したのである。
 
 この発言は、インターネット販売禁止の根拠は、表向きは「安全上の理由」と言っているが、実は「薬局という既得権業界を擁護したい」ことが本音だと、正直に吐露したものと思われた。こうやって建前と本音がごっちゃになるから、規制改革はなかなか進まない。

 仕分けという公開の場でさえ、こんな「本音」が出てきてしまうのだから、非公開の役所内部の「検討」では推して知るべしだろう。

 そしてもう一つ落胆させられたのが、通信販売の可能性を「検討する」という結論である。専門家を入れた仕分けをするなら、はっきり結論を出したらよいのに、今後の検討を、規制を強めてきた役所側に丸投げしたわけである。

 議論を傍聴していた医薬品のネット販売会社ケンコーコム・後藤玄利社長は、この結果について、「今回の仕分けでようやく『検討』にこぎつけた」と肯定的に評価する。私も、今後に向けての第一歩となる可能性は否定しないし、もちろん議論の前進を期待したい。

だが、今後、本当にまともな検討が進むのかと考えれば、甚だ疑わしいと言わざるを得ない。とりわけ、今後の「検討」が役所の内部で、再び非公開の場でなされるのだとしたらなおさらだ。
 
※SAPIO2011年4月20日号

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