国際情報

中国の危機は毎日600~1000件起きる暴動と櫻井よしこ氏指摘

 オバマ政権が発足した2009年当初、「G2」という言葉は盛んに使われた。これは、米中の2大超大国が中心となって世界を動かす体制の意だが、米国は2010年に対中政策を根本から変え、G2政策を口にする人々はほぼいなくなった。ところが、当の中国が力をつけ、アメリカと肩を並べ、さらには凌駕していこうとしている。だが、このまま中国がすんなり大国になれるとは限らない。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が指摘する。
 
 * * *
 中国が抱えている最も深刻な危機は、他でもない、自国の中にあります。アフリカ・中東諸国の革命に端を発した、民主化への動きが、元々存在していた中国国内の民主化要求運動を活性化させるのではないかと、中国共産党指導部は極度に恐れています。

 中国共産党政権が民主化を恐れている証拠のひとつが、民兵、公安警察、武装警察の年間予算が、なんと、中国の軍事予算よりも多いという事実です。2011年度の軍事費が約7兆5000億円であるのに対し、実に7兆8000億円に上ります。

 それでも国民の不満を抑制することはできません。これまで中国国内で発生する暴動は年間10万件と言われていました。しかし、現在では年間20万~30万件もの暴動が起きていると言われます。ざっと見て毎日600件から1000件近い暴動が発生している計算で、それを中国共産党は暴力で抑え続けているわけです。

 しかし、人間は生活がある程度豊かになると、必ず自由を求める存在です。そして自由への渇望を止めることは誰にもできません。

 中国は経済を発展させ、民衆を豊かにさせることでその不満を抑えようとしていますが、現状では貧富の差は恐ろしいほどに開きつつあります。富士通総研の柯隆主席研究員の報告によれば、中国では上位0.4%の富裕層が国民所得の70%を占めているのです。13億人の0.4%はわずか520万人です。民主党などは日本の現状を格差社会だと批判しますが、日本は人口の上位1%が国民所得の10%を占めています。

 中国こそ、格差社会の典型です。そのような歪んだ国情の中で、人々の自由で公正な社会、政治的権利の平等や司法の公正さなどを求める声が弱まることはあり得ません。中国で民主化運動が大きなうねりとなれば、共産党が主導する経済成長戦略や軍拡の動きもストップすることが考えられます。

※SAPIO2011年5月4・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
大谷翔平(写真/Getty Images)
《昨年は騒動に発展》MLBワールドシリーズとNPB日本シリーズの日程が“まるかぶり” NHKがワールドシリーズ全試合放送することで新たな懸念も浮上 
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(HP/時事通信フォト)
「私嫌われてる?」3年間離婚を隠し通した元アイドルの穴井夕子、破局後も元夫のプロゴルファーとの“円満”をアピールし続けた理由
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン
小野田紀美・参議院議員(HPより)
《片山さつきおそろスーツ入閣》「金もリアルな男にも興味なし」“2次元”愛する小野田紀美経済安保相の“数少ない落とし穴”とは「推しはアンジェリークのオスカー」
NEWSポストセブン
aespaのジゼルが着用したドレスに批判が殺到した(時事通信フォト)
aespa・ジゼルの“チラ見え黒ドレス”に「不適切なのでは?」の声が集まる 韓国・乳がん啓発のイベント主催者が“チャリティ装ったセレブパーティー”批判受け謝罪
NEWSポストセブン