国内

福島に住む僧侶「震災後に増えた自殺も二次災害のひとつ」

死者・行方不明者は、合わせて2万6000人を超えた東日本大震災。しかし、この数字に反映されない犠牲者少なくないという。そんなカウントされない被災者の現実をノンフィクション作家・河合香織氏がレポートする。

* * *
福島第一原発から45km離れた福島県三春町に暮らす、作家で禅宗の僧侶である玄侑宗久さん(55)は、震災後1か月ほどの間にすでに自殺の葬式を2件ほど担当したそうだ。小さい町なので、いつもよりもあきらかに多い。

「心が不安定であった人は、余震が続いて大地が揺れるということに耐えられない不安を持ったのでしょう。仕事もなくなって、生活のめどもつかない。放射能にも怯えなければならないのですから」

いい知れぬ不安を話せる人もいない。自らの抱える孤独もまた震災後に浮き彫りになったのだろう。当然のことだが、それは震災による死者には数えられない。しかし玄侑さんはこれも二次災害ではないかという。

一方では、須賀川市において野菜農家の64才の男性が自ら命を断ち、飯舘村では102才の高齢者が計画避難の迷惑にならないように自殺したことが大きく報道された。人生に絶望し、あるいは自分のせいで家族が逃げられない事態を恐れた心のうちを考えると息苦しくなる。

世間には知らされないけれども、地震と無関係とはいえない無数の死もまた現実に存在している。そして、これからもそのような死が増え続けるのかもしれない。玄侑さんはいう。

「いまはどさくさに紛れてわからない不安が、今後だんだんはっきりと見えてくるでしょう。自分が置かれた立場の救いようのなさが見えてきたときこそが問題なのです」

※女性セブン2011年5月12日・19日号

関連記事

トピックス

妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?(時事通信フォト)
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?「エンゼルス時代のようなセットポジションからのショートアームが技術的にはベター」とメジャー中継解説者・前田幸長氏
NEWSポストセブン
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
元セクシー女優・早坂ひとみ
元セクシー女優・早坂ひとみがデビュー25周年で再始動「荒れないSNSがあったから、ファンの皆さんにまた会いたいって思えました」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
漫画家の小林よしのり氏
小林よしのり氏、皇位継承問題に提言「皇室存続のためにはただちに皇室典範を改正し、愛子皇太子殿下の誕生を実現しなければならない」
週刊ポスト
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン