ビジネス

公的年金 「70歳支給開始」の布石打たれているとの見方

東日本大震災を受け、政府は、家屋倒壊など財産の半分以上を失った人を対象に国民年金保険料を、給与を払えない事業主と給与を受け取れない従業員を対象に厚生年金保険料を最長1年間、免除する方針だ。未曾有の災害で財産を失った人を「未納」から救い、将来の年金給付を確保するための措置だ。

しかし一方で、政府は震災を口実にして、ただでも破綻寸前にある年金財源を切り崩し、受給額カットを狙って動き出している。

基礎年金の財源は、加入者が納める保険料と国庫負担(税収入)の折半で運営されている。だが、今回の震災の復旧・復興費を盛り込む1次補正予算の財源として、国庫負担分から2.5兆円を転用する構えだ。

「年金博士」として知られる社会保険労務士・北村庄吾氏はこう説明する。

「国庫負担が減らされた分は、国民から集めた保険料の余りを積み立てている『年金積立金』で穴埋めをすることになります。現在は年金制度の収支が悪化しているので、この積立金を少しずつ取り崩して間に合わせている状態であり、積立金を減らすことは、結局は年金の給付額カットにつながります」

国庫負担の転用分が、確実に返還されるという見通しは立っていない。1994~1998年にも国家財政の悪化の穴埋めとして約5兆円を取り崩したが、そのうち約3兆円は未返済のままだ。誰よりも将来に不安を抱えているのは被災者自身である。復興を名目に給付減額を図るなど本末転倒も甚だしい。

与謝野馨・経済財政担当相は今年1月、現在は原則65歳の公的年金の支給開始年齢について、「引き上げも検討すべきだ」と発言した。

「2013年に高齢者雇用安定法で継続雇用の年齢が65歳に引き上げられる。つまり65歳定年制の実現です。これが70歳年金受給開始の議論の布石になると見られています。実際、60歳定年制が立法化された2年後の2000年に65歳受給開始の年金制度改正が行なわれました」(北村氏)

※週刊ポスト2011年5月6日・13日号

関連記事

トピックス

山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン
ロシアで勾留中に死亡したウクライナ人フリージャーナリスト、ビクトリア・ロシチナさん(Facebook /時事通信フォト)
脳、眼球、咽頭が摘出、体重は20キロ台…“激しい拷問”受けたウクライナ人女性記者の葬儀を覆った“深い悲しみと怒り”「大行列ができ軍人が『ビクトリアに栄光あれ!』と…」
NEWSポストセブン
谷本容疑者(35)の地元を取材すると、ある暗い過去があることがわかった(共同通信)
「小学生時代は不登校気味」「1人でエアガンをバンバン撃っていた」“異常な思考”はいつ芽生えたのか…谷本将志容疑者の少年時代とは【神戸市・24歳女性刺殺】
NEWSポストセブン
大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン