ライフ

「延命治療はやめて」と高齢者願うも病院では「地獄の検査」

【書評】『後悔しない最期の時の迎え方』(井尾和雄著/現代書林/1470円)
【評者】嵐山光三郎(作家)

 * * *
 超高齢化社会では「どうやって死ぬか」が深刻な課題となる。多くの高齢者が「延命治療はやめてほしい」と願っているが、救急車で病院に運ばれると、心肺蘇生処置が施され、酸素投与、昇圧剤投与、心電図、血圧がモニターされて「地獄の検査」がひかえている。

 CTスキャン、MRI検査、血液検査と実験動物みたいに扱われ、人工呼吸器を装着されたら、死ぬまではずせない。スパゲッティ状になって「拷問」されながら死んでいくことになる。

 終末期の患者に、こういった延命治療は不用である。

 ただし痛いのや苦しいのはいやですね。モルヒネやオピオイドという医療用合成麻酔薬を使って心地よく死んでいきたい。

 できれば「自分の家で死にたい」と思う人も多い。家族に見とられながら、昔の人のようにすーっと死ぬのが理想。病院では死にたくない。ところが大学の医学部には終末期医療の科目がない。さあ、どうしようと思い悩んでいる人のために現われた医者が井尾和雄氏なのである。

 ドクトル井尾は在宅医療の達人で、患者の家に出かけてケアし、看取る。病状を楽にする。麻酔科出身だから、疼痛緩和や呼吸管理が専門で、病人をスパゲッティ状になんかしない。つまり「家で死ぬ極意」を実施している。こういう医者を待っていた。

 井尾氏にはまだ会ったことはないが、この本を読んで、早いところ頼んでおこうと思った。ドクトル井尾の評判は毘友垣添忠生(元がんセンター総長)より聞いた。垣添忠生氏と東京大学で同級の麻酔医大村昭人(元帝京大学医学部長)氏より麻酔術を伝授されたというところも心強い。

 私はかねてよりドクトル大村にモルヒネをたっぷり使って看取ってくれ、と依頼していたが、ドクトル大村がやってくれるかどうかは不確定のため、ドクトル井尾にお願いしようと決意した。いまのところ元気なので、このような書評を書きおくことにした。

※週刊ポスト2011年6月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
決定戦で横綱を下した安青錦(写真/JMPA)
【最速大関・安青錦の素顔】ウクライナを離れて3年、なぜ強くなれたのか? 来日に尽力した恩人は「日本人的でシャイなところがあって、真面目で相撲が大好き」、周囲へ感謝を忘れない心構え
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
主演映画『TOKYOタクシー』が公開中の木村拓哉
《映画『TOKYOタクシー』も話題》“キムタク”という矜持とともにさらなる高みを目指して歩み続ける木村拓哉が見せた“進化する大人”の姿
女性セブン
北川景子
《子どもを寝かせてから高いお菓子も》北川景子、子育てエピソードに広がる共感、失敗談も隠さずオープンに “39歳のママ女優たち”が支持を集める理由 
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト
CM露出ランキングで初の1位に輝いた今田美桜(時事通信フォト)
《企業の資料を読み込んで現場に…》今田美桜が綾瀬はるかを抑えて2025年「CM露出タレントランキング」1位に輝いた理由
NEWSポストセブン
亡くなったテスタドさん。現場には花が手向けられていた(本人SNSより)
《足立区11人死傷》「2~3年前にSUVでブロック塀に衝突」証言も…容疑者はなぜ免許を持っていた? 弁護士が解説する「『運転できる能力』と『刑事責任能力』は別物」
NEWSポストセブン
アスレジャー姿で飛行機に乗る際に咎められたそう(サラ・ブレイク・チークさんのXより)
《大きな胸でアスレジャーは禁止なの?》モデルも苦言…飛行機内での“不適切な服装”めぐり物議、米・運輸長官がドレスコードに注意喚起「パジャマの着用はやめないか」
NEWSポストセブン
(左から)小林夢果、川崎春花、阿部未悠(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫の余波》女子ゴルフ「シード権」の顔ぶれが激変も川崎春花がシード落ち…ベテランプロは「この1年は禊ということになるのでしょう」
NEWSポストセブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン