ライフ

ジャワ島の熱帯の人里で「黄金のクワガタムシ」に出会った

黄金に輝くオウゴンオニクワガタ

 クワガタムシの色といえば、黒か茶褐色のイメージを持つ人がほとんどだろうが、世界に目を向ければ、黄金に輝くクワガタがいる。iPhoneアプリ「世界のクワガタムシ」にも収録されているオウゴンオニクワガタがそれだ。ジャワ島で幻のオウゴンオニクワガタと出会うまでの道のりを、小学館『図鑑NEO』シリーズ編集部がリポートする。

 * * *
 ジャワ島西部、ケンチャナ山の麓は、森が切り開かれて広大な茶畑になっている。砂利道を車で上っていくと、茶畑の頂上近くに数軒の家があった。茶畑の世話をしている人々の小さな集落だ。

 熱帯のジャワ島では涼しい山の上に茶畑がつくられるため、クワガタムシが住む森と、人が隣り合って暮らすことになる。この集落でも、夜になると、家の明かりに誘われて、山の森からクワガタムシが飛んでくるという。そう、目当てのオウゴンオニクワガタだ。

 ここでお茶を栽培しているエンティスさんが、「オウゴンオニクワガタの幼虫を見せてあげよう」と案内してくれた。茶畑の中の細い道を30分ほど歩くと、森の入り口だ。薄暗い山道を登り始めてまもなく、開けた場所があり、大きな木が倒れていた。エンティスさんは「この倒木の中に、オウゴンオニクワガタがいる」という。

 長さ5mほどもある大きな倒木を、エンティスさんが斧で崩すと、すぐに幼虫の掘ったトンネルが見つかった。そこにオウゴンオニクワガタの数匹の幼虫が見つかった。そのほとんどは倒木の地面に近い湿った部分から出てきた。

 同じ倒木を崩していくと、オウゴンオニクワガタの新成虫が見つかった。ところが、その色は、目当ての黄金色ではなく、黒色だ。本当にオウゴンオニクワガタなのだろうか?

 オウゴンオニクワガタの成虫は羽化した後、しばらくの間、倒木内の蛹室にとどまっている。湿った木の中にいたため、体が真っ黒で、違うクワガタムシのように見えたのだ。

 目当ての金色に輝くオウゴンオニクワガタの成虫は、茶畑の木の枝に捕まっていた。鈍い黄金色に輝く独特な体色をしたオウゴンオニクワガタのオス。内側に反った大アゴの先端が3つにわかれているのも特徴だ。

 オウゴンオニクワガタの仲間は、マレー半島、ボルネオ島、スマトラ島、ジャワ島に分布している。こうした珍しい大型種のクワガタムシは、ほとんどが東南アジアの熱帯雨林に見られる。ヨーロッパと北アメリカにも、アジアの温帯域と共通のグループが住んでいる(南アメリカ、オセアニア、アフリカ南部には、他の地域には見られないグループが住んでいる)。

関連記事

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト