ライフ

海産物の放射能汚染調査 危険の線引きは「感覚的」と水産庁

 7月11日、福島県南相馬市の牧場で飼育され、5~6月に出荷した6頭の牛肉のうち、1頭から1kgあたり3400ベクレル、もう1頭から同2200ベクレルものセシウムが検出されたことがわかった。しかも、残り4頭分は東京都や大阪府、北海道など10都道府県に流通しているという。

 現在、国が定める食品のセシウム暫定規制値は1kgあたり500ベクレル。その4倍以上も汚染された食肉が流通している可能性があるのだ。食の安全管理の至らなさがあらためて浮き彫りとなった今回の事態だが、福島第一原発の事故による汚染水の処理の問題から、ずっと指摘されているのが、魚の汚染だ。水産庁漁場資源課は、海産物の調査についてこう説明する。

「現段階では、汚染の分析費を水産庁から出せる状況ではないので、海産物の放射性物質検査については基本方針を示し、あとは各県にお任せする形をとっています」

 水産庁のホームページに書かれている「水産物の放射性物質検査に関する基本方針」によると、沿岸に生息する魚(たいやすずき、かれいなど)の場合、検査の対象は表層、中層、底層と水深ごとに3分割し、主要水揚げ港で週1度程度検査を実施するよう求めている。広い海域を回遊する魚(かつおやさんまなど)の場合は、漁のシーズンが始まる前に同様のサンプリングを行うよう求めている。必要な検体は1魚種5kgとしている。

 そのガイドラインに沿って調査を行っている各自治体だが、調査の難しさに頭を抱えているのが実情だ。宮城県水産業振興課はこう語る。

「水産庁のガイドラインに従って、週1度、1魚種5kgの検査を行うのはかなり負担です。予定していても本当に水揚げできずに検査が行えないこともあります。全ての魚種で検査を行うのは実質不可能です」

 この検査で暫定規制値を超えたものが出た場合はどうなるのか。

「基本的には漁業者独自の判断に任せていますが、必要なら県知事や農水大臣から出荷の自粛を要請します。強制力がある措置としては、原子力災害対策特別措置法に基づいて、必要に応じて出荷制限をかけることができます」(水産庁漁場資源課)

 難しいのは自粛の線引きだ。調査によって「490ベクレル」といった規制値ぎりぎりの数値が出た場合はどう対応するのだろうか。

「490ベクレルならもう1度検査を行います。200~300ベクレルであれば、どうですかね。線引きは感覚的に行っているんじゃないでしょうか」(水産庁漁場資源課)

 何ともグレーゾーンが多いことを認める水産庁の見解だ。

※女性セブン2011年7月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン