国内

織田信長、坂本龍馬…日本では突出した人物は非業の死遂げる

暴走する菅首相と民主党政権を前に、なぜこの国では真のリーダーが育たないかの議論が巻き起こっている。そこに、歴史的観点から独自の視点を提供するのが『逆説の日本史』著者である、作家の井沢元彦氏だ。以下は、井沢氏の分析である。

* * *
福島の原発問題を受けて、海外メディアは「現場の日本人は素晴らしいが、トップへいくほどダメだ」と評価しています。実は、大日本帝国が滅んだ時もまさに同じ状況でした。

日本は、リーダーを育てるのが苦手なんです。日本以外の国では評価されるリーダー像、例えば織田信長のような突出した人物が非業の死を遂げることが多いのが日本史の特徴です。和を乱す独断専行型のリーダーは、「世話人」型のリーダーを好む日本ではどうしても煙たがられるわけです。

後醍醐天皇しかり、足利義満しかり。彼らが実現しようとしたことが正しいか正しくないかは実は問題ではなく、周囲に話を通したかどうかが問題になってくるのです。

そうした事例は、古代から既に見られます。邪馬台国の女王・卑弥呼もそうです。私は卑弥呼は暗殺されたと考えていますが(『逆説の日本史』・第1巻『古代黎明編』参照)、古代では、非業の死を遂げたリーダーは神として祀り上げられました。卑弥呼の場合、大和朝廷の天皇家の祖神・天照大御神として祀り上げられたと私はみています。

諡号に「徳」のつく天皇にも同じことがいえます。仁徳天皇などのように、当初は中国的な発想で善政を敷いた天皇に「徳」の字が贈られていました。しかし、聖徳太子以降、あまり良くない亡くなり方をしている天皇に「徳」の字が贈られるようになりました。

文徳天皇、順徳天皇、安徳天皇などがそうです(第3巻『古代言霊編』参照)。「徳」の字が贈られた最後の天皇は、後鳥羽上皇です。後鳥羽上皇はその死後、当初は「顕徳」という諡号が贈られています。

こうした考えは後年まで影響を与えています。例えば、宮本武蔵と佐々木小次郎の決戦で、武蔵が勝ちましたが、その舞台となった島(船島)は、小次郎の流派である巌流からとって巌流島と呼ばれています。宮本島でも、武蔵の流派・二天島でもありません。

天皇になろうとした将軍・足利義満も『逆説の日本史』では暗殺されたと主張しました(第8巻『中世混沌編』参照)。義満の場合、息子の義嗣に親王格式で元服式を行ない、後小松天皇の皇太子に据えようとする動きが本格化しました。そこで天皇を守ろうとする力が働き、義満は消されたわけです。

そのように考えると、自ら神になろうとした織田信長が、本能寺の変で殺されてしまったこと(第10巻『戦国覇王編』参照)が、大きな示唆を与えてくれているように感じます。

その後、平和な江戸時代を経て、幕末には坂本龍馬が出てきますが、暗殺されてしまいます。つまり昔から日本史では歴史を通して、「英雄」は消されているという事実が浮かびあがってくるのです。

※週刊ポスト2011年7月22・29日号

関連記事

トピックス

生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
新宿・歌舞伎町で若者が集う「トー横」
虐待死の事例に「自死」追加で見えてきた“こどもの苛烈な環境” トー横の少女が経験した「父親からの虐待」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン