国内

読売、日経記者が飛ばす野次の背景に「選民思想」と上杉隆氏

 原発、政局の報道を通じ、記者クラブの特権意識が醜い形で露呈している。実はその「特権」は通用しなくなりつつあるのだが、そのことに気付いていないのは当の記者クラブだけだ。もはや「裸の王様」と化した記者クラブをジャーナリストの上杉隆氏が批判する。

 * * *
 周知のように、記者クラブは長年、記者クラブに加盟していない雑誌、ネット、外国メディア、フリージャーナリストらを記者会見から排除し、自分たちだけが報道を担っているとでも言いたげな特権意識を持ってきた。いや、自分では特権とは意識せず、むしろアプリオリ(先天的)に与えられている当然の権利と考えているという意味で、それは「選民思想」と言っていいかもしれない。

 その「選民思想」が3月11日の東日本大震災以降、醜い形で噴出している。

 例えば、4月2日、東京電力は初めて、福島第一原発2号機から放射性物質を含む汚染水が海に流出していることを認めたが、その海洋汚染の可能性については、3月23日の時点からフリージャーナリストの日隅一雄氏らが繰り返し東京電力の記者会見で追及していた。

 その間、記者クラブメディアの記者たちはただの一度もその問題について質問していない。それどころか、読売新聞の記者は日隅氏の質問に対して、なんと、「お前たちの会見じゃないんだぞ!」と野次を飛ばしたのである。

 同様に3月30日、同じくフリージャーナリストの田中龍作氏が東京電力の記者会見において、勝俣恒久会長が震災当日、記者クラブに属するマスコミの元幹部たちと中国旅行に出掛けていたこと、しかも東電が旅行費用の多くを負担していたことを取り上げ、そうした癒着の問題点を追及していたところ、日本経済新聞の記者が「もういいよ、その質問は!」と追及を遮ろうとしたのである。

「お前たちの会見じゃない」「その質問はもういい」ともに、記者クラブの「選民思想」が吐かせた言葉だが、本来、メディアがメディアに、ジャーナリストがジャーナリストに言う言葉ではない。

 一昨年の秋以降、記者会見のオープン化が徐々に進んだ。そのため、東京電力の記者会見にも非記者クラブのメディアやフリーのジャーナリストが参加し、自らも「原子力村」の一員として広報的な役割に堕していた記者クラブメディアに代わり、東京電力を厳しく追及してきた。長年の記者クラブによる情報独占体制が崩壊しつつあるのだ。

 記者クラブ側にはそのことに対する苛立ち、焦りがあり、それが質問妨害的な野次を飛ばさせ、さらには冒頭で紹介したような印象操作的な記事を書かせているのだろう。

※SAPIO2011年8月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン