国内

暑さで作業進まぬ福島原発 夜間作業は事故頻発し原則中止に

「(福島第一原発の事故について)危機状態から一定の収束の方向が見えてきた」――菅首相はこう自慢顔で答弁したが、気の遠くなるような長丁場を覚悟する現場の作業員は一笑に付す。原発に作業員として潜入したフリーライターの鈴木智彦氏が、現場の様子をリポートする。

 * * *
 現在、東京電力福島第一原発(1F)ではサマータイムが実施されている。最高気温に達する午後2~3時付近の作業を避け、早朝か夕方の涼しい時間に就業するシフトで、夜間の作業は原則的に中止された。

「最近、暗がりの中で転倒したり、側溝に落下して骨折した事故などが続いたからだろう。1Fの周囲は真っ暗で、外灯もなく、ライトを点けても視界が悪い。太陽が昇って気温が上がってしまうと長い時間働けないが、そのぶん、安全に作業が出来る。実質的な作業時間を考え、安全確保に時間をとられる深夜の作業より能率的と判断したんだと思う」(5月の連休明けから1Fに就労した作業員)

 作業時間の短縮も行なわれた。いわき湯本の旅館から(対応拠点の)Jヴィレッジ、Jヴィレッジから1Fまでの往復時間、着替え、ミーティングなどを含め7~8時間拘束される。実際の作業時間は、長くても4~5時間だが、勤務時間は担当する作業によって格差が存在する。瓦礫撤去の土木作業員のように運動量が多く、短時間で高線量を浴びる仕事は否応なく勤務時間が少ない。平均値とは言っても勤務時間の差はでかい。

「結局、どんな仕事を担当しても汗だくになるのは同じ。なにせ長袖・長ズボンの下着に綿の靴下、その上にタイベック(防護服)を着て、全面マスクを被ってるんだからね。手には三つの手袋を重ね着し、袖口をテープで塞がなきゃならない。ビニール手袋を脱ぐとたまった汗がぼたぼたと落ちてびっくりするよ。

 顔面も汗だらけになる。息がリーク(顔とマスクの間から空気が漏れること。言い換えれば放射性物質の舞い散る空気を吸うこと)しないよう全面マスクとタイベックの隙間をテープで遮蔽してるから、目に汗が入っても拭えない。そもそも汚染された手袋のまま皮膚に触ることはできない」(5次請けの協力会社作業員)

※週刊ポスト2011年8月5日号

関連キーワード

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン