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除隊願望あった自衛官 被災地遺体捜索で「辞めずによかった」

SAPIOは東日本大震災と闘う自衛官とその家族、OBたち120名に対して取材を敢行した。ここにあるのは、日本人が忘れてはいけない「3.11後」を支えた人々の「奮闘の記録」である。今回は陸上自衛隊福島第一原発警戒区域内瓦礫撤去に従事した匿名隊員の話を紹介しよう。

* * *
陸上自衛隊の精鋭部隊に所属する20代前半の隊員。3週間に及ぶ福島第一原発の警戒区域内(20km圏内)での任務を終え、駐屯地のある関東に戻ったばかりのところで、話を聞いた。

実はこの隊員、震災以前は自衛隊を除隊しようと考えていたという。

「もう自衛隊は十分だと思い、海外に出て、自分の見聞を広めたいと思っていました。でも、辞めないで本当によかった。やっと、国民に貢献できたと思います。もし辞めてしまって、今回の派遣に加われなかったら悔しい思いをしたでしょうし、親にも顔向けできませんでした」

しかし、隊員がよかったと振り返る任務は、決して楽なものではなかった。

「3月末に南相馬市に入り、まず残っている住民の方に、何が必要か聞いて回りました。その後、遺体捜索と瓦礫の撤去にあたった。朝の5時に起床して6時には作業現場に向かい、夕方5時まで作業。食事はレトルト中心です。入浴は2週間に1回だけ。車両で片道3時間かけて入浴施設に行きました。毎日、悪臭漂う泥にまみれての作業だったので風呂は唯一のストレス発散でしたね」

耐え抜けるのは常日頃から、30キロを超える装備を身につけての100km以上の行軍などを行なっているからだ。

「今まではずっと辛い訓練の日々でしたが今回、実任務で被災地の人の役に立てたのがありがたかったです」

隊員はそう誇らしげに語った。

※SAPIO2011年8月17日・24日号

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