国内

内田樹氏 一流大学秀才入社殺到がテレビから創造性失わせた

総視聴率の低下に加え内外から寄せられる批判――テレビの凋落に歯止めがかからない。それはなぜなのか、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏が分析する。

* * *
CMを流すことと引き換えにクオリティの高いコンテンツを視聴者に無料提供するという民間放送というアイディアは20世紀で最も成功したビジネスモデルである。このシステムは絶対に手放してはならないと私は思っている。だが、このすぐれたビジネスモデルを破壊しているのはテレビ業界自身である。

草創期のテレビにかかわったのは、1960年安保闘争に敗れ、就職先もない“やさぐれた”人々だった。先行モデルもなく制約もない中でこの世代のテレビマンたちは高い創造性を発揮した。

だが、この華やかな成功が結果的にテレビを破滅へ導くことになる。一流大学出の秀才たちがテレビ界に殺到してきたからだ。

秀才は本質的に「イエスマン」であり、前例を墨守し、上司の命令に従うことはうまいが、クリエーション(創造)にも冒険にも興味がない。安定した組織を維持し、高給や特権を享受することには熱心だが、危機的状況への対応や新しいモデルの提示には適さない。

草創期の冒険的なテレビマンが姿を消し、成功した先行事例を模倣することしかできないイエスマンがテレビ界を独占するに至って、テレビからは創造性も批評性も失われた。

この先テレビが復活する可能性があるとすれば、一度どん底まで落ちて、世間から「テレビマンは薄給で不安定な職業」と見なされ、秀才たちがテレビを見限った後だろう。

※週刊ポスト2011年8月19・26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン