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社会的な「利他行為」は性交するより気持ちがいいと脳科学者

「利他行為は運を引き寄せる」――これは京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授による最新研究だが、運のいい人はなぜ無意識に利他行為に駆り立てられるのか。

 諏訪東京理科大の篠原菊紀教授が脳科学の見地からメカニズムを解説する。

「他人に褒められた時の脳の活動を調べると、金銭などの報酬を得た時に活発に働く『線条体』と呼ばれる部位の血流が増加することがわかっています。つまり、褒められることを、脳は金銭的な報酬と同じようにとらえているのです」

 褒められることは快感を伴う。仕事がうまくいった時や、宝くじが当たった時の喜びの瞬間、脳内の「報酬系」と呼ばれる神経回路が働く。脳内物質ドーパミンが大量に分泌され、非常に気持ちがよくなるが、利他行為をしたときも同様のメカニズムで快感が得られるという。

 ならば、他人から褒められるために人は利他行為を起こすのだろうか。

「他人からの賞賛は必ずしも必要ではありません。自分や他人の行動を監視する機能を持つ内側前頭野の働きによって、他人から褒められなくても、自らの満足によって快感がもたらされます。一般に“社会脳”とも呼ばれる部分です」

 さらに篠原氏は、社会的な利他行為をしたときの快感は、金銭などの報酬を得たときの刺激を超え、質の高い快感をもたらすとも付け加える。

「線条体の活動の強さ自体は、さほど変わらないのですが、社会的な利他行為の結果得られる快感には長期的な視点が含まれていて、もっと高次元の快感があるのです。宝くじが当たった時や、セックスによる射精時よりも、ある意味でずっと気持ちがいいのです」

 ただし、誰の脳にも常に同じ働きが起きるわけではなく、ある行動について共感するか否かについては、個人差が非常に大きいようだ。

※週刊ポスト2011年9月2日号

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