国際情報

タイ人は忍耐強く手先が器用で中国人のように簡単に辞めない

 タイに新しい女性リーダー・インラック首相が誕生し、同国に注目が集まっている。そして、タイは世界でも有数の親日国で最近は日本企業の移転も進んでいる。忍耐強くて手先の器用な人材が豊富なこの東南アジアの親日国を、かつて「第二の東北地方」と呼んだ大前研一氏は、日本企業の海外移転先をタイに置くメリットをこう述べる。
 
 * * *
 もともと私はタイを“第二の東北地方”と呼んだことがある。日本の産業は、人件費の上昇と労働力不足で京浜、中京、阪神工業地帯などから周辺の地方都市に出て行き、最終的には東北地方に立地した。
 
 まだ東北地方では、中卒や工業高校卒の労働力を確保することができたからだ。しかし、いよいよ東北地方でも人件費が上がって人手も足りなくなり、競争力を失った会社の大半がタイに工場を移転したのである。
 
 それほどタイは日本企業の海外生産基地に適した相性の良い国なのだ。その理由は、まず労働コストが安く、世界で最も親日的な国だということである。「世界の工場」と呼ばれた中国は政府から毎年15%ずつ給料を上げるよう通達が出て、今や月給5万~6万円になったが、タイはまだ2万~3万円である。
 
 しかもタイ人は中国人と異なり、経営に対して協力的だ。中国人は上昇志向が強く、最近は不平不満があったらすぐに弁護士を連れてきて会社と争う。だから中国では従業員の増減が難しくなっている。かつては100人単位で採用・リストラできたが、もはや無理だ。とくにリストラは1人ずつ、恐る恐るでなければできない。その点タイは、今でも100人単位の採用が可能である。
 
 加えてタイ人は忍耐強く手先が器用で、中国人のように簡単に辞めることもない。根気と習熟が必要な仕事を、今では日本人よりも上手にこなす。さらに、これまでは政情不安の影響で、バーツがあまり上がらず、競争力を維持することができた。タイは日本企業にとってメリットばかりの国なのである。
 
 だから、今や日本の自動車・自動車部品、家電、光学機器などのメーカーが、バンコク南東のチョンブリ県や中部のアユタヤ県に集積している。そこには日本企業の工業団地と日本人の住宅街があり、日本食の店が軒を連ねている。
 
 たとえば、ニコンは仙台工場で作っていた一眼レフカメラを10年くらいかけてタイに移し、今では高級モデルも含め一眼レフの大半はタイで製造している。あるいは前回の本連載で述べたように、日産自動車のコンパクトカー「マーチ」も、今やすべてタイ製だ。大方の部品が現地調達できるようになったから日本の工場を閉め、日本市場向けもタイからの「逆輸入」にしたのである。このように、かつては日本の得意技だった分野を労働の習熟性も含め、世界で最も再現できている国がタイなのだ。

※SAPIO2011年9月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マッサージ店”の元マネージャー、プンシリパンヤー・パカポーン容疑者(38)。12歳のタイ少女にわいせつな行為をあっせんさせた疑いがある(写真右:時事通信)
〈仕事の初日、客は1人〉〈怖くて手も腕も足も震える〉押収物の“日記”に綴られた壮絶な日々……12歳タイ少女に性的サービスあっせんの“ブローカー”タイ人女性(38)が検挙
NEWSポストセブン
苦戦が予想される岸信千世氏(時事通信フォト)
《総選挙・注目選挙区を予測》橋本龍太郎・元首相の息子、安倍晋三・元首相の甥は苦戦の見通し 「反高市」の武田良太氏は維新現職と与党同士の潰し合いに
週刊ポスト
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
「長期間歩かずにいたせいで神経に影響」クスリ漬け、歯を全部抜かれたのでは…中国ギャル系インフルエンサー(20)の現在の容態《“詐欺集団の幹部の恋人”説に本人が「以前はね」》
NEWSポストセブン
北海道日高町で店の壁の内側から遺体が見つかった事件。逮捕された松倉俊彦容疑者(49)、被害者の工藤日菜野さん。(左・店舗のSNSより、右・知人提供)
「2人の関係は公然の事実だった」飲み屋街で目撃されていた松倉俊彦容疑者と被害女性の“親密な関係” 「『嫁とはレス』と愚痴も」【日高・看護師死体遺棄】
NEWSポストセブン
不正受給の返還を促す中小企業庁HPより
《コロナ禍から3年》「就職しようとしても不正の件がすぐにバレ…」 全額返還しても不正受給者とその家族を悩ませ続けるネットに残る名前
NEWSポストセブン
島根県の私立松江西高校で男子生徒が教師と見られる男性に暴言や机や椅子を投げたりする動画が拡散されている(HP/Xより)
「謝れや、オラァ!」私服の生徒が暴れ、“おじいちゃん教員”は呆然と立ち尽くし…「炎上した動画は氷山の一角です」島根・松江西高校のOBが明かした“環境激変”の実情
NEWSポストセブン
2025年に成年式を終えられた秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
「後継者は悠仁さま?」伝統の書道“有栖川流”、眞子さまは「筆致に賛否」佳子さまは「左利き」……秋篠宮家「書道教育」事情
NEWSポストセブン
年末に放送された『ザ・ノンフィクションの大みそか2025~放送30周年スペシャル~』司会の吉岡里帆、出演したクズ芸人の小堀敏夫
《消えた「女優・吉岡里帆の笑顔」》相方にも愛想尽かされて解散…クズ芸人・小堀敏夫氏がコンビ解散の真相を激白
NEWSポストセブン
照ノ富士(右)と先輩・白鵬の立場は逆転か(時事通信フォト)
《元横綱・照ノ富士》高まる伊勢ヶ濱親方の存在感 弟子の四股名は変更し、スカウト網もその手に…“白鵬の残したすべて”を獲得する勢い
週刊ポスト
「新年祝賀の儀」で彬子さまが着用されていたティアラが話題に(時事通信フォト)
《これまでと明らかに異なるデザイン》彬子さまが着用したティアラが話題に「元佐賀藩主・鍋島家出身の梨本宮伊都子妃ゆかりの品」か 2人には“筆まめ”の共通項も
週刊ポスト
韓国のガールズグループ・BLACKPINKのリサ(Instagramより)
《目のやり場に困る》BLACKPINKのリサ、授賞式→アフターパーティの衣装チェンジで魅せた「見せる下着」の華麗な着こなし
NEWSポストセブン
「第8回みどりの『わ』交流のつどい」で、受賞者に拍手を送られる佳子さま(2025年12月、共同通信社)
「心を掴まれてしまった」秋篠宮家・佳子さまが海外SNSで“バズ素材”に…子どもとの会話に外国人ユーザーらがウットリ《親しみやすいプリンセス》
NEWSポストセブン