国際情報

自民・石破氏 「核攻撃を受けたら核開発」発言の真意を語る

 原発と核――。この問題に対して沈黙を守る政界において、唯一、持論を展開しているのが、自民党の石破茂政調会長である。核兵器を持つべきではないが、「核の潜在的抑止力」を維持するためには原発をやめるべきではないと主張する石破氏にその真意を聞いた。

 * * *
――2つ疑問があるのですが、まず1つ目は、核攻撃するとすぐに核の報復をされるから怖くて使えないというのが核抑止力であるとすると、半年とか1年経ってから核兵器を作れる能力を持っていても意味がないとの指摘があります。いかがですか。

石破:だからこそ「潜在的抑止力」なんです。核の基礎研究から始めれば、実際に核を持つまで5年や10年かかる。しかし、原発の技術があることで、数か月から1年といった比較的短期間で核を持ちうる。加えて我が国は世界有数のロケット技術を持っている。この2つを組み合わせれば、かなり短い期間で効果的な核保有を現実化できる。そして、こうした潜在的抑止力は米国の「核の傘」の信頼の下にある。

――2つ目に、核を持つといっても、1個では意味がない。安全保障上必要な核兵器の数はどれくらいですか。
 
石破:確かにオブジェのように1個だけ持っていても意味がないが、米国やロシアと同じように何千と持つ必要もない。核兵器は「使わないことに意義がある」兵器であり、いたずらに多く持てばいいというものではない。

 参考になるのは、英国やフランスの核政策でしょう。これらの国々が数量的に少ない核兵器をなぜ持っているのか。ド・ゴール(元大統領)がなぜ核保有にこだわったのか。大国フランスのプライドでもあるだろうし、米国の「核の傘」を全面的に信頼しているわけでもないのだろう。

 私はいずれ、時間ができたら英国やフランスの核政策について徹底して研究したいと思っている。いずれにしても、核保有国は、自国の生存のために必要だと政策的に判断したからこそ核を保有している。これを理解しないまま、「非核三原則」のもとで安易な思考停止に陥ることは、わが国の存立を危うくすることになりかねません。

――(核武装を決断して)NPT(核拡散防止条約)を脱退すると、核燃料が止められてしまい、原発も動かせません。結局は、「核か原発か」の二者択一になってしまうのでは?

石破:それは今後の「原発」のあり方にもよるでしょう。わが国は核燃料というフロントエンドは外国に頼り、バックエンドたる核サイクルも未だ展望が見えていないため、そのような二者択一になる。だから、今までのところ「絶対に軍事利用しない」という条件の下で、IAEA(国際原子力機関)の厳格な査察を受け入れながら原発を進めてきた。日本の核抑止力が「潜在的」である所以です。

※SAPIO2011年10月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト