国際情報

「独島は韓国領」とする韓国の主張は矛盾だらけと報道写真家

 竹島にほど近い鬱陵島視察に訪ねた日本の国会議員3人が「入国拒否」された直後の8月上旬に韓国に乗り込み、鬱陵島・竹島取材を敢行した報道写真家の山本皓一氏が、独島を自国の領土という韓国側の主張の矛盾をえぐる。

 * * *
 まず竹島といっても「3つの竹島」が存在する。整理すると以下の通りになる。
・現在の日本名・竹島(かつての日本名・松島、現在の韓国名・独島)
・かつての日本名・竹島(または磯竹島、現在の鬱陵島)
・現在の韓国名・竹島(竹嶼)

 日本側には多くの文献・地図資料があり、「松島」と「竹島」の2つの島の存在を早くから認知していたことが確認されている。それに対して、韓国側が「独島」の領有権を主張する根拠を三段論法風にまとめれば次のようになる。

▼古来、韓国側も「鬱陵(武陵)島」と「于山島」という2つの島を領土としてちゃんと認知していた。たとえば、『世宗実録地理志』(1454年)にはこんな記述がある。

「于山、武陵の二島、県の正東の海中に在り、二島相去ること遠からず。風日清明なればすなわち望み見るべし」

▼その「于山島」こそ、現在の「独島」である。これは『東国文献備考』「輿地考」(1770年)の記述が代表的だ。

「輿地志にいう、鬱陵、于山は皆、于山国の地。于山はすなわち倭(日本)のいわゆる松島(現在の日本名・竹島)なり」

 また、「独島」の“新住所”にも名前が冠せられている漁師・安龍福は、1693年、鬱陵島で密漁中に、当時実効支配していた日本側の漁師たちに捕らえられ、鳥取藩や対馬藩の下で取り調べを受けた。その後、日本に密航した際に日本側史料(「覚書」1696年)に書かれた安龍福の証言も論拠に挙げられている。

「松島(現在の日本名・竹島)は、すなわち子山島(=于山島)であり、これもまた我国の地である」

▼よって、「于山島」=「独島」は韓国領である。

 以上が、韓国側の主張である。だが本当に「于山島」は現在の日本名・竹島なのか? たとえば、韓国側の文献に初めて「于山」の名が登場した『太宗実録』(1416年の項)には、こんな記述がある。

「武陵島(現在の鬱陵島)は周囲が七息で、傍らに小島がある。その田(畑の意味)は五十余結で、入る道は人ひとりがやっと通れるぐらいで、二人が並ぶことはできない」

 韓国側の研究者は、ここで言う鬱陵島の「傍らの小島」は無名の島で、「その田は」以降の記述は鬱陵島についての記述だと主張する。だが、日本側の第一人者、下條正男・拓殖大学教授は、前後の記事からこの小島は「竹嶼」のことだと指摘している。

 また、日本側の史料『竹嶋紀事』によれば、対馬藩の取り調べに対して安龍福は次のように答えている。

「鬱陵島の北東に大きな島があり、この島を知っている者がこれを于山島だと言っているのを聞いた」

 これらの記述を総合すると、「于山島」とは、「鬱陵島の北東にあって、人ひとりがやっと通れるぐらい狭い道の先に畑が広がっている島」ということになる。

 韓国が主張する「独島」は、鬱陵島の「南東」92kmにあり、岩礁であるため「入る道」などろくになく、ましてや「畑」になるような土地もない。逆に、これらの特徴をすべて兼ね備えているのは“もう一つの竹島”すなわち「竹嶼」だと推測するのが自然だろう。つまり、韓国側が従来の史料・論拠から主張できる領土は「鬱陵島と竹嶼」であり、現在の日本名・竹島までは及ばないのである。

 実際、18世紀以降、韓国側で発行された地図に記された「于山島」の形や大きさは、見事に「竹嶼」と合致する。しかしその矛盾は無視される。

※SAPIO2011年10月5日号

関連キーワード

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン