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93才ぎんさん三女「わしら子供のころ日本まだ貧しかったでな」

100才の双子、きんさんぎんさんブームから20年。そのぎんさんの4人の娘も、いまや平均年齢93才だ。90年近く前のことでも、姉妹はまるで昨日あったことのように話し出す。

千多代さん(三女・93才):「わしら子供のころは、日本がまだ貧しかったでな。うちは農家やったから、そりゃあ、6つか7つのころから、畑に出て草取りなど手伝っとった」

年子さん(長女・98才):「畑仕事には、労働力がいるがね。当時はな、子供ちゅうても、家にとっちゃ、なくてはならん、大事な働き手だったがね」

時代は大正・昭和初期に遡るが、このころの小学校は尋常小学校と呼ばれ、いまと同じ6年制の義務教育だった。その後の進路は、高等小学校(2年制で現在の中学校にあたる)への道はあったが、大半は奉公などに出て就職するか、家業を手伝うというのが一般的だった。

蟹江家では、長女の年子さんと三女の千多代さんは、尋常小学校を卒業すると進学をあきらめ、家業を手伝った。

美根代さん(五女・89才):「ふたりの姉たちが家のことやってくれたんで、私と百合子は高等小学校まで行くことがでけた」

百合子さん(四女・91才):「それでわしらふたりは、卒業してから郵便局で働けるという道が開けた。そりゃ、こん人はな(千多代さんを指して)、家のために犠牲になって働いた。おっかさん(ぎんさん)もきゃんしん(感心)するくらい、そりゃ、朝から晩までよう働いた」

千多代さん:「姉さん(年子さん)は数年してから外に働きに出たで、いちばん家の仕事をしたのはわし。朝はな、日の出とともに野良に出て、おっかさんと一緒に畑仕事。盆も正月もなかった。いまの子たちにはできやせんわな。んだで、顔も手も足も、そりゃあ、まっ黒に日に焼けてな、健康美人やった。そいだからいまでも、4人のなかで私がいちばん色が黒い(笑)」

そんな千多代さんの胸には、母・ぎんさんのこんな言葉が染みついている。

<日暮れ、腹へれ、夜長なれ>

ぎんさんが自分の体験から娘に教えたこの金言、いや“ぎん言”には、ところどころ言葉が省略されている。それを補うと、こういう教訓になる。

「日が暮れるまでよく仕事をすれば、腹がへって食事がおいしいし食欲旺盛になる。そして夜もぐっすり眠れ、明日への気力が養える」――

※女性セブン2011年11月10日号

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