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大前研一氏 今後「能動的な視聴者」増えTV離れ起きると予測

テレビ業界の減収や減益が止まらない。さらに、テレビ局の試練はこれからが本番であり、テレビのコンテンツも本質的な変化を余儀なくされると指摘するのは、大前研一氏だ。以下は、大前氏の解説である。

* * *
現在のテレビ局のビジネスモデルは「パッケージ化」である。つまり、朝は情報番組、夕方にはニュース、その後はバラエティ番組というように、決まった時間に決まった番組を放送するプログラムを作り、24時間をパッケージ化して放送している。

ところが、テレビのデジタル化によって、パッケージ化に反発する「アンバンドル(もともとセットで提供されていた商品やサービスを別々に提供すること)」の大革命が起きる。

すなわち、各テレビ局のパッケージの中に、個々の視聴者が本当に見たい番組はどれだけあるのか、という問題である。たとえば、ある人が面白いと思う番組や興味のある番組はAテレビに一つ、B放送に二つしかない、ということになれば、パッケージの縛りを解いて、それらの番組だけを配信するサービスが出現するのは避けられないのだ。

実際、すでにアメリカでは、オンラインDVDレンタル会社のネットフリックス(Netflix)が、そういうサービスを提供している。世界中のデジタル情報を集めているグーグルと同じように、ネットフリックスは世界中のテレビ局から番組を集め、映画も各種取り揃えて「顧客が見たいものを見たい時に」配信しているのだ。いわば“テレビと映画のグーグル化”である。

パッケージ化という現在のビジネスモデルは、強制的に流れてくる番組や自分が見たくない番組でも朝から晩まで漫然と眺めていることに抵抗のない人々――少々古い言葉でいえば“カウチポテト族”用にできている。

だが、ネットフリックス型のサービスが登場すれば、そういう「受動的な視聴者」はITリテラシーの低い高齢者などに限られる。

大半の人々は、自分が見たい番組を見たい時に見る「能動的な視聴者」となり、テレビ離れが起きる。ただでさえCM収入の減少に伴う制作費削減で、どこのテレビ局でも同じような顔ぶれの芸人やタレントを集めたバラエティ番組ばかりになって若者を中心にテレビ離れが進んでいるが、その傾向が一気に加速するのだ。

その結果、テレビ局は視聴率が落ちてCM収入が減少し、いっそう業績が悪化して衰退の一途をたどる。

とはいえ、受動的な視聴者がいきなりゼロにはならないから、産業が“突然死”するわけではなく、徐々に衰弱して“緩慢な自然死”を迎えることになるだろう。

※週刊ポスト2011年11月4日号

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