スポーツ

落合監督 超偏食治ったのは信子夫人が「別れる」と脅したから

落合監督地元名物の「柳川鍋」

ニュースと人に縁のある料理を紹介する「日本全国縁食の旅」。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が語る今回は、今季で中日ドラゴンズ監督を勇退する落合博満氏の巻。秋田出身の同監督と郷土の名産品を使った料理の意外な関係とは!?

* * *
就任以来8年連続Aクラスという驚異的な好成績を残しながら、今季限りで退任する落合博満・現中日ドラゴンズ監督。球団幹部との確執が囁かれるなか、見事セ・リーグを制し、日本一に向けて快進撃を続けている。

落合監督の出身地は、秋田県南秋田郡若美町(現・男鹿市)。東北有数の湖としても知られる八郎潟のほど近くだ。その八郎潟の名産として知られるのがドジョウ。実際、監督として初の日本一に輝いた直後、2007年に出演したバラエティ番組で、用意された「柳川鍋」をおいしそうに口にして、「そばに八郎潟でしょ。こういうのはいつでも食べられた」「小さいときには、なまず、ドジョウ、ふな」などとコメントしていたという。

柳川鍋とは、開いたドジョウと笹がきにしたゴボウを甘辛い割り下で煮て、卵でとじた料理のこと。もともと江戸前の料理だが、現在ではドジョウを出す店の品書きには、まず間違いなく「柳川」があるほどドジョウ業界ではポピュラーな調理法だ。

だが、実は落合監督には魚嫌いだった過去があった。信子夫人の著書『悪妻だから夫はのびる』(カッパ・ホームス/1986年)にも知り合った当時の偏食ぶりが詳細に記されている。「食べるものに関しては、メチャクチャ」「お豆腐が大好きで、ゆで卵が好き」「カマボコとめん類も大好きでしたが、お魚や野菜類は、いっさいダメ」と相当の偏食家だったというのだ。

実際、魚の刺身を食べられるようになったのも、信子夫人が「おつき合いするの、やめようかなぁ……」と脅したことがきっかけだったとか。そうして若い頃の「ロッカールームでカップラーメンをすすって試合に臨み、帰宅すると晩酌」(自著の『落合博満の超野球学』(ベースボールマガジン社/2003年))という荒れた食生活は改善されていったという。だがどの程度、魚嫌いが改善されたのだろうか。

そこで実際に番組のビデオを入手して、本当に「柳川鍋」が好きなのか確認してみた。出演したのは人気番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』の看板コーナー、『新・食わず嫌い王決定戦』。ゲストの好物数品のなかに一品だけ嫌いなものが混じっていて、ゲスト同士がお互いの嫌いなモノを当てるという企画だ。

「柳川鍋」が供された回は、選手時代も含めて通算3回目の出演。過去2回の出演時に「嫌いなもの」として挙がっていたのは、キャビアとシャコだった。どちらも魚介類だ……。

それまで無敗だった落合監督だが、この回では、番組MCのとんねるず・石橋貴明に「(きっとドジョウが)小さいときに、秋田でたくさん田んぼにいたんですよ。なんでこんなもん食うんだと(思っていたに違いない)」と指摘されて苦笑い。

実食中は「ごはんにかけて食べるのが一番いい」とカムフラージュしたものの、最後には「参りました」と頭を垂れ、「大っ嫌い。(ドジョウもゴボウも)両方ダメなの」と吐き捨てていた。

では監督が本当に好きなものは何か。その謎は息子である落合福嗣氏の著書『フクシ伝説』(集英社/2010年)に載録された落合一家の鼎談に記されていた。話題が「最後の晩餐」になったとき、落合監督は「オレはもう決まってる」「コメ食って終わるんだ」「最後のメシはコメと決めている」と主張。信子夫人の「最後の晩餐だったらアタシは他にもごちそう出すよ~」という逆襲にも「オレはコメだけでイイって」と頑として譲らない。

考えてみれば柳川鍋を「ごはんにかけて食べるのが一番いい」と言ったのは、嫌いなドジョウでも大好物のごはんにかければ何とか食えるかも、ということか。一見単純なようでも、「オレ流」の根本はロジカルな思考にある。監督在任中の全シーズン、チームをAクラスに導いた持ち前の慧眼で、有終の美を飾れるか。それだけの「土壌」はあるはずだ。

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン