国内

福岡暴力団公判 証言者続々証言拒否に「日本でないような…」

暴力団排除条例や、銀行などからの暴力団締め出しで、ホームレス一歩手前まで追い詰められる末端組員が続出しているという。だがこれでヤクザは壊滅に向かうとの見方は楽観的すぎるようだ。ベストセラーの『暴力団』(新潮新書)などの著者でノンフィクション作家の溝口敦氏は、逆に、矢面に立たされる住民側の暴力団被害が間違いなく増大すると警告する。

* * *
暴排条例の先進地である北九州市では10月13日、八幡西署が暴力団工藤会幹部らの名刺を刷ったとして、印刷業者2社に警告書を、下請けの印刷業者ら3社に注意書きを出した。印刷業者は工藤会幹部ら20人の名刺作成を15万円で引き受けた。これは暴排条例の「暴力団の活動を助長する利益供与の禁止」規定に違反するというのだ。

業者が警察に警告されるなんてまっぴら、カタギ相手の仕事に差しつかえると思うなら、発注主の暴力団に面と向かって「うちではお宅の仕事は扱えないんですよ」とお断わりしなければならない。

暴力団はカッとなって業者を殴るかもしれない。当然、業者はケガを負うが、ケガは自分持ちである。どこも治療費を負担してくれない。警察は騒ぎの後ノコノコ登場し、「実行犯はどこのどいつや」と捜査にかかるだけだ。

現に福岡県飯塚市で今年2月、建設会社の事務所に銃弾6発が撃ち込まれた。被害に遭った会社の社長は、公共工事の受注が少なくなって金繰りが苦しい、暴力団排除条例もあるので、地元の暴力団太州会にみかじめ料の支払いを断わった、と語っている。

警察はみかじめ料の支払いを拒まれた太州会側が建設業者に報復するため発砲したと見て、太州会の幹部ら6人を銃刀法違反などで逮捕したが、太州会側は否認している。

要するに今後は住民が暴力団の矢面に立つ。その結果、何が起きるかといえば、住民側の暴力団被害が間違いなく増大する。北九州市に根を張る前出の工藤会はカタギの市民も容赦なく攻撃することで全国に名を知られた指定暴力団だが、日本全国にこうした「工藤会現象」が拡散すると見られる。

工藤会は住民に対してどのような乱暴を働いているのか。最近の事例では、西部ガスの関連会社と役員宅を銃撃した、九州電力の会長宅に爆発物を投げ込んだ、暴力団追放運動に取り組む住民が経営するクラブに手榴弾を投げ込んだ、安倍晋三元首相の自宅と後援会事務所に火炎ビンを投げ込んだ、工藤会追放運動の自治会役員宅を銃撃した、みかじめ料の支払いを拒否したパチンコ店に火炎ビンを投げ込み、放火した……などである。

そのため工藤会の公判では証言者5人中4人が証言を拒否するなど、日本ではないかのような異常事態が生まれている。

警察庁はこういう工藤会に対し「極めて悪質な団体」などと名指しで非難しているが、福岡県警の捜査は手ぬるく、住民襲撃の首謀者ばかりか実行犯さえほとんど逮捕できていない。完全に暴力団になめられているのだ。

警察庁は暴力団つぶしに本腰を入れている、暴排条例でヤクザ壊滅だ、などと思っている人はお人好しでなければ、アホである。後で煮え湯を飲まされることは間違いない。

※SAPIO2011年11月16日号

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン