国際情報

中国の低所得者向け住宅事情 業者の不正転売で消える運命

不動産バブルに沸いた中国。一部の富裕層が富を独占し、低所得者層は持ち家の夢を絶たれたのが現実だ。さらに、そんな彼らのために作られた住宅「保障房」もまた、マネーゲームに利用されようとしている。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

* * *
都市部での不動産価格(土地は使用権の売買価格)が下落傾向に転じた中国だが、その価格は庶民にはまだまだ手の届かないレベルに止まっている。持ち家の夢を断たれた国民の不満は高く、国内のメディアが街角で『中国の問題』を質せば、必ずベスト5までに不動産高騰問題が挙げられるというのが、ここ五、六年続く傾向だ。

こうしたなか党・政府が力を入れているのが「保障房」と呼ぶ低所得者向けの住宅である。党と政府は地方政府に対して、一定規模の低所得者向け住宅の建設を義務付けて推進を呼び掛けてきた。

しかし、そこは抜け目のない中国のこと、きれい事のまま終わらないのが常である。11月の中旬、中国の古都・西安市で収入証明書を偽造して大量購入していた不動産会社が当局によって摘発され、全国的な話題となっている。

そもそも身分証さえ偽造できる国で、一生の買い物をするのに偽造が横行しないはずはない。しかも本来「集団での購入」は禁止されている保障房で堂々と業者が大量に買い付けているのだからどうしようもない。

政府が用意した低所得者向け住宅はあっという間に転売(これも一定期間禁じられている)され、消える運命であることは火を見るよりも明らかだ。

一方、11月14日付の『新京報』は、この保障房の建設が、計画だけで実は進んでいないことに警告を発している。その手口は保障房を手掛ける地方が、マンション建設の土台を掘っただけで、そのまま工事をストップしてしまうというものだ。そのため〈監督者は建物ができ上がるまでしっかり見張るべきだ〉と呼びかけている。

いずれにしても不動産の売買は地方政府の収入と一体化しているので、地方政府にうまみのない開発などあの手この手でサボタージュしようという魂胆が見え見えだ。


関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン