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オリンパス事件 裏に「外資系渡り鳥」のドリームチームあり

オリンパスの巨額損失隠しを巡る問題が世界の注目を集めている。なぜ、20年もの長きにわたって損失は隠蔽され続けたのか。隠蔽を「指南」したのは野村證券OBを中心とする「外資系渡り鳥」たちだとされている。彼らは一体何者か。メンバーが手口と現在の心中について、重い口を開いた。ジャーナリストの伊藤博敏氏が報告する。

* * *
オリンパスの巨額損失隠しに、オリンパス外部の“熟練者”が複数、指南役として携わっていた。バブル時代に日本の証券会社で活躍し、バブル崩壊後は自らの腕だけを頼りに外資系金融機関を転々としてテクニックを磨いた「外資系渡り鳥」と呼ばれた男たちだ。

彼らはなぜ、危険を冒してまでオリンパスの隠蔽に手を貸したのか。それは、リスクに見合うだけの巨額な見返りがあったからと見るべきだろう。一般論として「この種の業務には、総額の1割が支払われるのが常識」(外資系金融マン)というから、例えばジャイラスルートであれば687億円が捻出されたので、数十億円が指南役たちに渡る計算になる。実際、この取引にかかわった金融マンのうちの一人が事件発覚後に離婚する際、申告した資産は9億円近かったと報じられている。

そういった“絆”で結ばれたのが、1980年代から「財テクに熱心な企業」として知られたオリンパスと、その財テクの指南役を務めた後に「飛ばし」のスキームを構築した「外資系渡り鳥」たちだった。

「飛ばし」を担ったのは、1990年代の初めまでにペイン・ウェバー証券(現UBS)に集まった男たち。既に名前のあがっている中川昭夫、佐川肇をはじめとする中心メンバーわずか10人弱のグループである。野村證券OBが中心で、いずれもいくつかの外資を渡り歩いた当時40代の脂の乗り切った“凄腕”の金融マンだった。

そのメンバーが、匿名を条件に取材に応じた。重い口を開いて、こう振り返る。

「株、債券、M&Aと、人数は少ないけど、一騎当千の“ドリームチーム”だった。国内証券はもちろんのこと、ゴールドマンなど他の著名外資も目じゃなかった」

ただ、この1990年代頃のオリンパスの「飛ばし」は、2000年以降のような1300億円に達する巨大なものではない。メンバーが続ける。

「ゼロクーポン債(割引債)を使った単純な損失先送りのスキームだった。金額も100億円程度。ただ、オリンパスは他にもクレスベール証券が販売していた『損失先送り商品』を購入、飛ばしの総額は2000年には600億~700億円に達していた」

こうしたいわゆる「飛ばし商品」と呼ばれるものの販売元は、1990年代末までに相次いで摘発された。当時、当局の「修正すれば罪には問わない」という指導もあって、「飛ばし」は沈静化していった。

だが、オリンパスは止めなかった。「確実な収益をあげられる医療用内視鏡が、損失先送りを許す“体力”につながった」(オリンパス関係者)というから皮肉なものだが、2000年3月期、翌年3月期の「時価会計制度」の導入で、含み損を表面化させざるを得なくなる。すると、本格的な「飛ばし」に踏み切ることを決意、その相談をしたのも、前出の「ドリームチーム」だった。

メンバーのうちの中川、佐川らで立ち上げたのが、今回の英医療機器メーカーのM&Aに絡んで687億円を手にしたアクシーズ・グループである。アメリカ法人のアクシーズ・アメリカを1997年にまず設立、米国歴が長い佐川が代表となり、日本にはその翌年、アクシーズ・アメリカのパートナー企業としてアクシーズ・ジャパン証券を設立、中川が代表となった。

アクシーズ・アメリカ代表の佐川とはどんな人物か。

「米国の女性と結婚した佐川は、精神的にもアメリカ人。合法的な決算の“操作”に、問題はないと考えている。ただ、FBI(米連邦捜査局)が乗り出してきたので怖がっている。FBIと接触の後、消息不明となっているが、趣味のクルーザーで海の上じゃないか。今回に限らず、彼は年に数か月はそうして過ごす」(別のメンバー)

一方、中川は典型的な外資系金融マン。野村證券の在籍わずか 2年。メリルリンチ証券へ移り、スキルを磨いてより良いポストと報酬を求めて会社を移り歩く「外資系渡り鳥の第一世代」となった。

「腕は抜群。飛ばしも含めて、グレーゾーンを合法にするテクニックは天才的。佐川は管理畑のバックオフィスの人間で、スキームを組み立てているのは中川だと見ていい。事件発覚後、香港に飛んだと聞いた」(外資系金融機関幹部)

中川は事件発覚後に香港の高級マンションの前で、女性同伴でいるところを海外メディアに直撃されている。

オリンパスでこの問題を担当したのは、当時、財務担当常務だった菊川剛(元社長)、財務担当部長の山田秀雄(元監査役)とその部下の森久志(元副社長)だった。

彼らが頼ったアクシーズの中川、佐川以外に、もうひとり重要な人物がいた。野村證券で高崎支店長、新宿ビル支店長と役員コースを歩みながら、1998年に退職、コンサルタント会社のグローバル・カンパニー(GC)を興した横尾宣政である。

事業法人への食い込みでは伝説の証券マン。横尾もまたエピソードには事欠かない。

「頭脳明晰で、押しが強くハッタリも利く。ペーパーなしで1時間でもプレゼンし、注文をもらってくる奴。M&Aのテクニックにも長け、グレーゾーンをクリアする技を持ち、『横ちゃんの妖刀村正の術』と、言われたほどだ」(野村證券時代の同僚)

そんな横尾に“惚れた”菊川は、横尾がGCを設立してから、オリンパスのM&A戦略を全面的に任せた。オリンパスは2000年に企業買収やベンチャー投資のための「300億円ファンド」を設立するのだが、ここの運営は横尾に委ねた。

清算に使われた国内3社の株式を所有していたのはGCである。オリンパスは「タネ玉」をそこから購入した。つまり、「300億円ファンド」は、粉飾の“小道具”として使われることがあったのだ。

横尾の銀座での豪遊は知られており、会社のワインセラーには高級ワインのロマネコンティが並んでいたという。

粉飾は、ある意味でなりふり構わずに行なわれたが、関与する人間は限られていた。2000年以降、社内では菊川、山田、森の3人だけであり、社外は海外を担うアクシーズの中川、佐川と、国内のM&A部門を見る横尾だけである。

バブル時代の財テクの指南役が「飛ばし」「清算」まで任された格好だ。なぜそんな異様な関係が続いたのか。飛ばしにかかわったメンバーである、アクシーズ元幹部は言う。

「小人数で“不法”を共有していたから秘密は保たれた。海外部門に口を出さず、互いの領分を侵さないことが、長期飛ばしの遠因でもあった」
(文中敬称略)

※SAPIO2011年12月28日号

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