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2011.12.28 07:00  週刊ポスト

海部俊樹氏 「消費税増税したいなら国民に丁寧に直言せよ」

現在日本の政治は「政治主導」とは名ばかりで、官僚主導のまま。日本の政治はどこへ向かっていくのか。そんな現状に対し「言わずに死ねるか!」――政治家経験者による日本政界への提言を聞こう。ここでは元総理大臣の海部俊樹氏(80)の話を聞こう。

* * *
私が総理大臣に就任したのは、竹下内閣の消費税導入直後の1989年だった。参院選で自民党が過半数を割り、「衆参ねじれ」の状況で首相になった。そうしたなかで総選挙を行なわなければならない。

当時、竹下(登・元首相)さんにも、「選挙の時に新税などとんでもないことをやってくれた。あなたがA級戦犯だ」と毒づいた。すると、竹下さんは、「その言い方はいいな。もっと穏やかに、にっこり笑って、『選挙の時に新税などやりたくなかったが、国の財政を考えると必要だった』と、申し訳なさそうに演説でそういったらどうか」と。

国民の生活に直結することこそ、丁寧に説明するのが政治家の責任だ。増税の話は言う方もつらい。ウソをいって国民を騙しちゃいかんけれども、どう説明したらわかってもらえるかを懸命に考えたものです。考えぬいて、街頭に立って演説を続けた。

街頭演説では、相手の顔をみれば、反対だな、不満があるなとわかる。それなら演説の後に「あなたが政治家になったと思って考えてみてください」と意見を聞くようにした。それは総理大臣の資質というより、政治家としての心構えの問題です。どじょう首相はどこまで努力をしているか。

野党に対しても同じ。竹下内閣で消費税法案を成立させた時、私は衆院の特別委員長代理でした。野党の社会党とは、「消費税は与党の責任でやる。あなた方は批判して結構だが、法案成立のために協力してくれ」と交渉し、事前に合意を取った。社会党の幹部がハンカチで汗を拭ったら、「審議を打ち切って強行採決していい」というサインまで決まっていた。

与野党で話し合う「国対政治」には批判もあるが、たとえ国民の批判を浴びたとしても、「大衆を恐れず、大衆を侮らず」、必要な法案を成立させるのが政権党の責任なのです。

外交でも、野田首相はTPPでどっちつかずの姿勢だ。私の首相時代も日米構造協議で米国から木材(合板)やスーパーコンピュータなどの市場開放を要求された。そこでブッシュ大統領(父)との首脳会談で、「合板もスパコンも話し合いは必ず進展させるが、制裁をチラつかせて脅すやり方は正義に反する。

日本人の米国への感覚が変わるかもしれませんよ」とはっきり主張した。国益を担って腹を割って話せば、相手も丁寧に話を聞いてくれるものです。一人の人間として胸襟を開いて説得をする。それができなきゃ、一国のリーダーにはなれません。

●海部俊樹:1960年初当選。内閣総理大臣、新進党党首などを歴任。2009年引退。

※週刊ポスト2012年1月1・6日号

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