ライフ

道路にはみ出した木の枝 苦情は所有者ではなく役所に言おう

竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「隣家の木の枝が道路まで伸びており、近所迷惑です」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
隣家の庭の木の枝が伸ばしっぱなしで、垣根を越えて道路まで出てきています。交通の妨げにもなっていて、特に自動車の運転に際して迷惑しています。枝を切るように申し入れたら、「他人の庭の木に文句をいうな」と断わられました。このような場合、どう対応すべきでしょうか。

【回答】
枝があなたの敷地に伸びてきて迷惑だという場合であれば、勝手に伐採することはできないものの、民法233条の「隣地の竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」との規定に基づき、隣家に剪定を請求できます。

しかし、道路への張り出しの場合は、この規定で伐採を求めることはできません。もっとも、自由な通行ができないほどであれば、妨害排除として伐採請求も可能だと思います。

ですが、それよりも道路管理の問題でもあるので、役所に対応させるべきでしょう。万一、枝が視界を邪魔して事故が起きたとします。庭木の所有者が、見通しを悪くして危険になっていることに気づくべきであったとすれば、枝を剪定すべき義務があります。これを怠ると、そのために発生した事故について、不法責任を負うでしょう。

次に、道路管理者の責任も否定できません。道路上に張り出した木の枝に自動車が接触して、物損を負った事故がありました。

近所から警告を受けながら、樹木所有者に剪定を依頼しただけで放置した道路管理者(市)に対して、裁判所は、「道路として通常有すべき安全性を欠く」と認定した上、市は樹木所有者を説得して枝を剪定させるか、張り出し部分の道路の通行禁止などの処置を講じるべきであったとして、道路管理の瑕疵を認めました。他にも道路上の樹木の繁茂等による事故について、道路管理者の責任を認めた事例はあります。

そこで枝が見通しを妨害しているなど、現場の迷惑状況を写真やビデオに撮って証拠にした上、道路管理を担当する役所に申し出ることをお勧めします。放置して事故になった場合には、道路管理者が損害賠償責任を負うことはわかっているはずです。そこまですれば役所の対処が期待できます。

※週刊ポスト2012年2月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン