ライフ

東大正門前『喫茶ルオー』 東大紛争時は負傷学生の避難所に

東大生が通い続ける『喫茶ルオー』

学生時代、懐かしく思い出すのは大学近くの定食屋。今も店主たちは、変わらぬ味と笑顔で出迎えてくれる。そんな「わが大学の人情定食屋」のひとつ、東京大学本郷キャンパス近くにある『喫茶ルオー』を紹介しよう。

東京大学正門の向かいに佇む『喫茶ルオー』の歴史は60年に及ぶ。昭和27年に画家の森田賢さんが赤門前に画廊喫茶として開業。昭和30年に入店した現店主の山下淳一さんが昭和54年に引き継ぎ、現在地に店を移した。

「昭和30年代の本郷通りは古書店、雀荘、喫茶店が数多く立ち並び、まさに学生街だったんですよ。赤門前のルオーは120席もあって、学生、芸術家や劇団員、文学関係者の溜まり場で賑やかでした」(山下さん)

1960年代後半には鶴見俊輔、小田実、開高健などべ平連(ベトナムに平和を!市民連合)のメンバーも立ち寄ったという。

「東大紛争の頃はケガをした学生が店に避難しに来たことも。本郷通りの歩道は石板敷きだったので、学生たちがたたき割って投石したんです。それにしても当時の学生はよく議論をしていました」

そしてカレーもよく食べたという。久しぶりに店を訪れ、ゴロンと入っている牛肉の大きな塊をほぐしながら「ちっとも味が変わっていない」と懐かしむ卒業生も多い。舌は味を忘れず、味は過ぎ去った時を呼び戻す。

「ここで勉強して司法試験に合格した学生もいます。入学した娘さんを連れたお父さんが『私も、私の父も学生時代に来ていました。親子三代です』と声をかけてくださったりすると、続けてきてよかったと思います」(山下さん)

【住所】東京都文京区本郷6-1-14
【営業時間】9時半~20時(土曜は17時まで)
【定休日】日曜

撮影■伊坂英彰

※週刊ポスト2012年2月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン