国内

福島第1原発作業員 「作業員が減りむしろ今が一番忙しい」

福島第1原発では、冷温停止状態から事故収束宣言に至り、事態は沈静化したかのように語られる。しかし現場では、今も多くの作業員が目に見えない放射能と闘っている。震災の直後から被災地を取材し続けている産経新聞東北総局の荒船清太氏が、リアルタイムで働く作業員たちの実像に迫る。

* * *
昨年12月に政府が原発事故の収束宣言を出した後も、東京電力福島第1原発では決死の「収束」作業が続けられている。作業が深奥に近づくにつれ、放射線量が増していく現場。孫請け構造による低賃金に悩みながらも、作業員たちは一生をささげる覚悟で今日も作業に臨んでいる。

夏には道からはみ出すように並んでいた作業員の駐車場は、車も随分減って隙間が目立つ。12月末、東京電力福島第1原発の収束作業の拠点、福島県広野町の「Jヴィレッジ」近くの原発作業員の民宿では、夏に比べて明らかに人数が少なくなっていた。

「夏あたりは200人ぐらいいたけどね、今は80人くらいかな」。民宿の従業員はそう振り返る。

毎晩のように民宿のマスターらと酒を酌み交わしていたちょびひげの名物作業員「マリオさん」の姿も見えない。「免停で作業できなくなっちゃったらしいよ」。酒席をともにしたことがある作業員(36歳)は言う。

「沖縄からきたアメリカ人とか、みんないなくなっちゃったなあ」。被曝線量が年間限度を超えたり、事故を起こしたり。完成した作業も出てきて、当時の作業員らは一人、また一人と、県外の従来の建設現場に散っていった。

ただ、残った者の忙しさは変わらない。「むしろ今が一番忙しいくらい」。建設会社の30代の中堅男性社員は話す。汚染水など一部の作業が完成に向かうにつれ、第1原発周辺の警戒区域では放射性物質の除染作業が本格化。各建設会社は地元から作業員をリクルートしたり、物資を手配したりで大忙しだ。

政府・東電は、福島第1原発の廃炉まで「最長40年かかる」と試算している。建屋のがれき撤去、除染、中間貯蔵施設の設置、そして廃炉。たとえ被曝線量が年間許容量を超えたとしても、1年後にはリセットされる。作業は尽きることがない。

この社員は震災前から原発関連の作業に携わってきた。「俺、廃炉んときまで生きてっかなあ」。仕事を終えた午後、タバコをくゆらせた。

※SAPIO2012年2月1・8日号

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン