国内

1箱1000円のたばこ 小津安二郎ほか、著名人が愛したピースの進化形

“ピース紺”のイメージを引き継ぎつつ、高級感あるパッケージが目を引く

 愛煙家には冷たい風が吹く昨今だが、振り返れば、歴史を動かしてきた多くの政治家・文化人がタバコを友としていた。日本にタバコが伝来したのは16世紀半ばから17世紀。タバコ伝来についての最古の記録には、徳川家康の名前が見られる。

 江戸時代までは、主に煙管タバコや刻みタバコが吸われていたが、明治の文明開化とともに、紙巻タバコが登場。明治の文豪、漱石と鴎外はともに愛煙家で、漱石は紙巻、鴎外は葉巻を好んだ。作家とタバコの関係は深く、愛煙家の開高健はタバコのみならずライターにもこだわりを持ち、ダンヒルのライターを蒐集していた。丸谷才一は原稿執筆中に両切のピースを一日95本吸ったと書いている。

 洋の東西を問わず、豪傑の政治家にも愛煙家が多かった。毛沢東は専用のタバコを手作りで作らせたといい、英国のチャーチルは、ダブルコロナサイズの葉巻をこよなく愛した。吉田茂はマッカーサーに葉巻をすすめられたとき「それはマニラでしょう。私はハバナしか吸いません」と言って断ったという逸話が残る。

 1946年1月13日に発売開始された「ピース」は、日本で最も長く愛されてきた高級タバコのひとつ。小津安二郎、山本周五郎、森繁久弥――錚々たる著名人も好んだ銘柄だ。

「ピース」発売時は戦後の混乱期。輸入の闇物品や粗悪品が横行する中、日本製タバコの威信をかけて開発され、未来の平和を願って「ピース」と命名されたという。10本入り7円。国産タバコでは一箱1円以下の銘柄が多い中、この価格は破格に高い。一方、創る側の熱意も並々ならぬものがあった。1952年、内閣総理大臣の月給が11万円だった時代に、鳩がオリーブの葉をくわえる現在のデザインにリニューアルした際には、デザイナーであるレイモンド・ローウィに150万円が支払われている。

 それから70年。タバコをめぐる環境は大きく変化したが、ピースはブレずに高級路線を貫き、2月1日、ついにピース史上最高峰とも言える1000円タバコ「The Peace(ザ・ピース)」が誕生した。20本入りでは国内最高価格、JT製品でもこれまで最も高かった「ピース・インフィニティ」(470円)の2倍以上。ニコチンは1.0mg、タールは10mgで全国3500店限定、対面販売式のみの販売とのこと。

「パッケージから高級感が漂いますね」と語るのは1日に2箱近く吸うという40代愛煙家の男性。メタリックネイビーのボディにはエンボス加工が施され、品よく艶めいていて、鞄からこのパッケージが出てきたら、つい目がいきそうだ。

「さすが、抑制が効いた上品な香りですね。味はまろやかです。両切の『ピース』ほどのパンチはないけどコクはあるし、癖の少ない『ピース・ライト』よりはインパクトがある。両者の良いとこどり、といったところでしょうか。値段が値段だし、懐にも自分にも余裕があるときに、ゆっくり楽しみたいですね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン