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米出身棋士マイケル・レドモンド氏 囲碁の極意を格言で解説

 マイケル・レドモンド氏は1963年5月米国カリフォルニア州生まれ。1977年14歳でプロを目指し来日。1978年に大枝雄介九段の内弟子になり修業を積む。1981年18歳で入段。2000年九段になり、その後テレビの囲碁解説などでも人気を博す。日本文化に精通したレドモンド氏が、毎週1つの格言を取り上げるこのコーナー。今週の格言は「貪れば勝ちを得ず」だ。

 * * *
 今回取り上げるのは「貪れば勝ちを得ず」という格言です。これは中国・唐の時代にできたと伝えられる『囲碁十訣』なる格言集の一節で、囲碁に限らず日常生活にもそのまま当てはまる人生訓といってもいいでしょう。おそらく、土台となる人生訓集が存在し、誰かがそれを囲碁になぞらえたのだと推察しています。

「貪る」=「欲張る」ですから、意味としては「必要以上に欲張ると勝てませんよ」といった内容になります。そして囲碁において「貪る」とは「互角以上の結果を出したいと思ってしまうこと」といえるでしょうか。

 本来、囲碁というゲームは両者が最善を尽くしていけば、互角の状態が続くゲームです。形勢が傾くのはどちらかがミスをした結果であり、本来、自分から形勢を良くするということはあり得ません。自分の好手・妙手によって優位に立ったとしても、その好手を許す形に持って行ってしまった相手側のミスが根底にはあるということです。

 しかし囲碁を打っていれば「形勢を良くしたい」「勝ちたい」という気持ちが強くなりますから、ついつい強引な無理手を打ってしまいがちです。そしてその「貪り」を咎められて形勢を悪化させ、負けに至る―これぞ典型的な負けパターンというもので、今回の格言は、こうした欲張りたくなる気持ちを戒めたものなのです。

 従って大事なのは「バランスをとる」ということ。囲碁でできることは互角の状態を保つことまでなのですから、それ以上を望んだとすれば、それは崩壊への第一歩を踏み出したことに他なりません。昭和の棋聖と呼ばれる呉清源九段のいわれる「調和」という言葉とも、相通ずるものがあるでしょう。

※週刊ポスト2012年2月24日号

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