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「試用期間」は解約権の留保状態 クビでも文句は言えません

竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「臨時採用で見習い期間中ですが、どのような立場なのでしょうか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 入社したとき、定期採用でなく臨時採用でした。勤務期間については特に決められておらず、「当分の間」ということでした。3か月間は見習いということで、特に契約はしていません。見習い期間で正式入社前の私は、自分の立場をどう考えたらよいのでしょうか。また、注意点を教えてください。

【回答】
 当分の間の臨時採用というのは、雇用期間の終期が明確に決まっていないということでしょうか。労働条件を明示した書面をもらっていると思いますので確認してください。具体的な期限が記載されていない場合、あるいは書面の交付がなく、口頭で「当分の間」といわれただけとすれば、期間の定めのない雇用契約になると思います。この場合は採用が定期採用でなかっただけのことで、普通の期間の定めのない雇用契約と同じです。

 その場合、辞めさせるには、労働基準法に従い、30日以上前の予告または30日分の賃金の予告手当が必要です。それだけでなく、労働契約法16条により、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、権利濫用で無効になります。

 しかし、まだ3か月の見習い期間中のようです。見習い期間とは、試用期間のことでしょう。面接や入社試験だけでは、性格や能力が十分に分からないので、いわば試しの期間です。資質、性格、能力、その他の適格性の有無について最終決定し、不適格者の本採用を拒否するという試しの期間です。

 法的には、使用者が解約権を留保した雇用契約であるとされています。そこで試用期間中、正社員採用を躊躇させるような働きぶりではまずいということになります。指示された業務を誠心誠意遂行し、戦力として期待されるように努力してください。

 なお、期限の定めがある臨時採用であれば、事情は違ってきます。本来は期間が満了すれば雇用は終了しますが、再雇用があり得るとの条件の場合や、何度も更新を繰り返している場合などは、雇い止めにより問題になることが少なくありません。そこで厚労省は労働基準法に基づいて、雇い止めによる紛争防止のための基準を策定しています。参考にしてください。

※週刊ポスト2012年2月24日号

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