国内

スナックのホステス 実は山口組の女装のヒットマンだった

 暴力団の若い組員は、抗争が始まると「鉄砲玉」として最前線に身を投げる。40年以上にわたって暴力団を取材し続けてきたジャーナリスト・溝口敦氏の新刊『抗争』には、若い組員達の様々なドラマが記されている。ここでは1985年当時の山一抗争のエピソードを紹介する。(文中敬称略)

 * * *
 竹中組の鳥取県倉吉市の組織に輝道会があった。この輝道会に山本尊章(事件時三六歳)、清山礼吉(同二七歳)という二人の組員がいた。

 彼らは考えた――わしらは倉吉の田舎にいて、神戸や大阪の地理は分からへん。地元倉吉の一和会で、マシなものいうたら赤坂進ぐらいなもんやろう──。

 赤坂進は一和会の幹事長補佐だった。同会幹事長・佐々木道雄の舎弟だったが、一和会発足後、山本広から盃をもらって直系組長に抜擢された。山本、清山の二人は赤坂進を攻撃対象に定めた。

 清山は小柄で、雰囲気が子供っぽい。清山は倉吉駅近くのスナック「C」で女装し、赤坂に近づくことを考えた。清山は組員といっても最末端だから金がなく、ほしくても女の服が買えない。それでソープランドに勤める知り合いの女性から服や装身具を借り、せっせと化粧と女装にいそしみ始めた。イヤリングからネックレス、マニキュアと進み、いつしか青いアイシャドウをさし、カツラを使うまでに女装は本格化していった。

 女装を始めて半年たった9月、清山はスナック「C」で赤坂の席に着けるようになった。赤坂はいつも子分連れで、子分たちはやや離れた席に陣取って水割りをなめる。「あの人、強そうやね。ピストル持っとんのやろか」

 清山は赤坂に平然と聞いた。当時はいつか赤坂とホテルにでも入った折、包丁で刺し殺そうと考えていたから、相手のピストルは鬼門である。

※溝口敦/著『抗争』より

関連記事

トピックス

復帰会見をおこなった美川憲一
《車イス姿でリハビリに励み…》歌手・美川憲一、直近で個人事務所の役員に招き入れていた「2人の男性」復帰会見で“終活”にも言及して
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相の「官僚不信」と霞が関の警戒 総務大臣時代の次官更迭での「キツネ憑きのようで怖かった」の逸話から囁かれる懸念
週刊ポスト
男気を発揮している松岡昌宏
《国分騒動に新展開》日テレが急転、怒りの松岡昌宏に謝罪 反感や逆風を避けるための対応か、臨床心理士が注目した“情報の発信者”
NEWSポストセブン
水原受刑者のドラマ化が決定した
《水原一平ドラマ化》決定した“ワイスピ監督”はインスタに「大谷応援投稿の過去」…大谷翔平サイドが恐れる「実名での映像化」と「日本配信の可能性」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン
現在は三児の母となり、昨年、8年ぶりに芸能活動に本格復帰した加藤あい
《現在は3児の母》加藤あいが振り返る「めまぐるしかった」CM女王時代 海外生活を経験して気付いた日本の魅力「子育てしやすい良い国です」ようやく手に入れた“心の余裕”
週刊ポスト
熊本県警本部(写真左:時事通信)と林信彦容疑者(53)が勤めていた幼稚園(写真右)
《親族が悲嘆「もう耐えられないんです」》女児へのわいせつ行為で逮捕のベテラン保育士・林信彦容疑者(53)は“2児の父”だった
NEWSポストセブン
リクルート社内の“不正”を告発した社員は解雇後、SNS上で誹謗中傷がやまない状況に
リクルートの“サクラ行為”内部告発者がSNSで誹謗中傷の被害 嫌がらせ投稿の発信源を情報開示した結果は“リクルートが契約する電話番号” 同社の責任が問われる可能性を弁護士が解説
週刊ポスト
上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン