国際情報

韓国人 高句麗時代に遡り「満州は我らが土地」と返還を主張

 中朝国境地帯の朝鮮族居住地などに隠れ住む脱北者は3万人とも5万人ともいわれるが、最近、中国側で“検挙旋風”が吹き荒れ脱北者の逮捕が相次いでいる。強制送還寸前との情報が脱北者ルートで韓国にもたらされ、救援運動が起きている。中国が取り締まりを強化する背景には北朝鮮に対する配慮だけではない思惑があると産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏は指摘する。

 * * *
 ソウルの中国大使館には「北への送還反対!」のデモが連日、押しかけ、女性国会議員のハンストも行なわれている。韓国政府は国連人権委員会に協力を要請し、米議会でもこの問題で緊急聴聞会の開催など、国際的広がりが見られる。

 ところが中国は以前から、脱北者については「不法入国者」「不法滞在者」として“犯罪者”扱いを変えていない。国内法に従って処理するだけという。「難民」など人権的観点は一切、受け入れないというわけだ。とくに韓国からあれこれ言われるのを極度に嫌ってきた。

 この背景には当然、北朝鮮への配慮がある。中国からすれば脱北者イコール反北勢力であり、それを擁護するわけにはいかない。

 しかし中国にとって脱北者問題は、単に北朝鮮への配慮だけではない。中国における少数民族問題やその分離・独立の動きまで念頭においた“深謀遠慮”がある、というのがソウルのウオッチャーたちの見方だ。

 中国は近年、チベットやウイグル、モンゴルなど内部的に厳しい民族抵抗に直面している。そこで脱北者問題が韓国がらみで国際問題化した場合、朝鮮族自治州など中朝国境地帯での中国の支配権は弱まり、長期的に新たな民族問題に発展する“恐れ”があるというわけだ。

 それに脱北者が「難民」として人権問題になれば、この人権問題は「民主化」という別の人権問題に飛び火するかもしれない。

 中朝国境地帯は、近代以前には朝鮮半島から“脱北者”が自由に往来したり、住み着いていたところだ。韓国人は古代・高句麗にまで遡り「満州はわれらが土地」と意気盛んで、現在の中国内の延辺朝鮮族自治州は19世紀末の日清戦争後、日本が清との“間島協約”で勝手に譲り渡したものだから返してもらうべきだとさえ言っている。

 だから中国は近年、中朝国境地帯からコリア色を消そうと懸命だ。朝鮮族自治州では人口をはじめ、すべてが漢人中心になりつつある。この地で脱北者や韓国人に“大きな顔”をされては困るのだ。

 韓中は今年、国交正常化20周年。民族問題がらみで両国の対立、葛藤の火ダネは意外に根深い。

※SAPIO2012年4月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
苦境に立たされているフジの清水賢治社長(左/時事通信フォト)、書類送検された山本賢太アナ(右=フジホームページより)
“オンカジ汚染”のフジテレビに迫る2つの危機 芋づる式に社員が摘発の懸念、モノ言う株主からさらに“ガバナンス不全”追及も
週刊ポスト
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?(時事通信フォト)
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?「エンゼルス時代のようなセットポジションからのショートアームが技術的にはベター」とメジャー中継解説者・前田幸長氏
NEWSポストセブン
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
NEWSポストセブン