国際情報

上海在住邦人駐在員「水質汚染に耐え切れず帰国した人いる」

 中国の温家宝首相は、3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の冒頭、政府活動報告を行ない、今年の経済成長率目標を7.5%と定めることを宣言した。常に拡大を続ける中国だが、一方では急激な成長のほころびもあちこちに生じている。中国の政治経済に精通するジャーナリストの相馬勝氏が解説する

 * * *
 製造業の生産過剰の弊害で、環境汚染が深刻化していることも見逃せない。6日の上海の天気は「晴れ」だったが、頭上には大気汚染による灰色の空が一面に広がっていた。上海在住の日本人ビジネスマンは、「そういえば、もう5か月もすっきりと晴れた日を見たことがない」と語るほどだ。

 長江流域の水質汚染も深刻だ。上海市内の一般住宅では水道水は飲めないどころか、泥のように濁っているところも多い。「水質汚染に耐えきれずに帰国した日本人駐在員もいる」と、このビジネスマン氏は表情を暗くする。

 環境問題のみならず、経済最優先の政策は、市内の至るところに綻びをもたらしている。現地駐在員によると、前述の上海センタービルの建設現場周辺の道路にひび割れが入り、大騒ぎになったという。ビルの重さに地盤が耐えきれなかったとみられている。

 この周辺の土地は泥や多量の水を含む軟弱地盤であるため、隣接する森ビル資本の上海環球金融センタービルの場合、地盤沈下を防ぐためにコンクリート杭を2271本も突き刺し、さらに巨大な耐圧板を敷いて安定を確保した。

 中国の政府系企業が建設する上海センタービルにも、同様の対策が施されているのだろうか。これはあくまで一例であり、このような人為的な問題が経済政策の成否を大きく左右するといってよいだろう。

※週刊ポスト2012年3月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン